《フェルヴィアとルクシア》戦いの間に本心を語るフェルヴィア
夜。森の奥、仲間が眠りに就いたあと。
焚き火の小さな炎を前に、フェルヴィアは肩を抱くように膝を抱えて座っていた。
「……私ね、本当は勇者になりたかったんだ」
火に照らされた彼女の横顔には、どこか子供のようなあどけなさが残っていた。
それを自分で笑い飛ばすかのように、フェルヴィアは苦笑した。
「物語ばかり読んで……ずっと憧れてた。悪を倒して、人を救って、お姫様を守る――そういうの。
だからルクシア、あなたに声をかけられたとき、運命だと思ったんだ。
『ああ、私も勇者になれるんだ』って」
焚き火のはぜる音だけが、返事のない間を満たす。
フェルヴィアは自分で吐き出した言葉に、肩を落とした。
「でも……違った。私は勇者なんかじゃない。ただの兵士で……妖精を無理やり使う、武器の代わりみたいな存在だった」
苦い笑みを浮かべ、片手で目元を覆う。
「幼稚だったんだよ。子供の夢を、大人になってまで追いかけて……そのせいでレリアまで巻き込んだ。
全部、自分で選んだことなのに」
最後の言葉のあと、フェルヴィアは手を下ろした。
焚き火の赤い光の中で、彼女の目尻にきらりと涙が浮かんでいる。
ルクシアは、その一滴を見逃さなかった。
――彼女は誰も責めない。
運命を人のせいにもしない。
すべて自分で決め、すべて自分の責任だと抱え込む。
その潔さは、物語に憧れた子供が夢見た“勇者”よりも、はるかに勇敢で強いものだった。
ルクシアは言葉を返せず、ただその姿を見つめるしかなかった。




