表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/90

訪問者と剣の少女―

辺境の森の中。

古びた石造りの館が佇んでいた。

その館の門前を、木陰からじっと見つめている一人の少女がいた。やがてその少女は意を決してか門にに近づいてきた。

旅の汚れだろうか、くすんだ外套が翻り、短く切った髪が風に煽られるたび、彼女の決意を映すように瞳が強く輝いた。


「止まれ! 何者だ!」

甲冑をまとった兵士たちが一斉に槍を突きつける。


「ルクシア様に……会わせてください!」

「私は……ミリア。ミリア・セルヴァーナです!セルヴァーナ辺境伯の者です!」

少女の声は震えていたが、揺るぎのない必死さを帯びていた。


そのとき、館のから静かに姿を現した影があった。

漆黒の髪、冷ややかな蒼の瞳――

かつて「歌姫」と讃えられた気品の面影を宿しつつも、その眼差しは氷の刃のように鋭い。


ルクシア・カエレスティア・レグナリア。


辺境伯フォルネウスが現れて、少女から差し出された封書を受け取る。

中身を確認した彼はわずかに眉をひそめ、それでも毅然と告げた。


「……放してやれ。」


兵士は掴んでいた少女の腕を離した。解放された少女――ミリアはまっすぐにルクシアへ歩み寄る。

辺境伯の剣が彼女の目の前に立ちはだかった。


「私は……ミリア。ミリア・セルヴァーナです」

剣を前にしても動揺することなくひざまづき頭を垂れると、震える声で言った。

「私を……ルクシア様の剣にしてください。どうか……!」


ルクシアはしばし無言で彼女を見つめる。

冷ややかな瞳が、ひたすらに縋りつく少女を射抜く。


「……理由を聞かせて。あなたの命を投げ出すほどの価値が、私にあるとでも?」


その声音には容赦のない嘲りが混じっていた。

しかしミリアは顔を上げる。


「……あの歌を、覚えています。

ルクシア様が歌っていた祈りの歌を……。

私は……片隅で、ずっと聴いていました」


一瞬、ルクシアの瞳にわずかな揺らぎが走る。

だがすぐに表情を引き締め、冷たく言い放つ。


「歌を聴いただけで剣になる? 滑稽ね」


そう言いながらも、彼女はゆっくりと手を差し伸べた。

「それでもなお望むのなら――覚悟を見せなさい。

復讐のために血を浴び、汚れ、私と共に地獄へ堕ちる覚悟を」


「……はい! 私は殿下の剣となり、盾となります!」


ミリアの頬が紅潮し、その瞳は熱に潤んでいた。

その眼差しは憧れを超え、崇拝に近い。


(あなたは私の幸せ……それを壊すものは、私の幸せを奪うもの。

誰であろうと許さない。たとえ、世界そのものだとしても……)


その心の奥底から立ち上る声は、純粋すぎる祈りのようであり、同時に危うい狂気の火種でもあった。


こうして――ミリアはルクシアの剣となり、盾となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ