「寄り添う影」ルクシアへの不満を持つミリア セレナの決意
野営地の外れ、灯りの届かない岩陰。
ミリアが一人、膝を抱えて座っている。星の光すら冷たく、空気は湿っていた。
しゃくりあげる声が、小さく、震えていた。
誰にも届かない場所で、ミリアは一人、感情をぶちまけていた。
「なんで……私のこと、わかってくれないの……
ルクシア様は、いつも……他の誰かの方ばっかり……」
そのとき、足音。
柔らかいが、躊躇いのない歩み。
岩陰の向こうから現れたのは――セレナだった。
「……隙があるな。ミリア。
泣いてる音、こっちまで聞こえたよ」
ミリアはびくりと肩を震わせた。
「来ないで……」
セレナはミリアの隣に静かに腰を下ろした。
「会いたくない相手が、副官なら同意するけどね」
ミリアが顔を上げる。涙に濡れた頬。
驚いたような表情。
「あいつは“伯爵の犬”というよりはルクシアの番犬だな…(笑)。どれだけうまくやってるように見えても、ルクシアを思って動いてるわけじゃない」
ミリア(震える声で)
「でも……ルクシア様は、あの人を……」
セレナ(目を細めて微笑む。だが冷たい)
「ルクシアはなんだかんだお姫様だからな…私達とは違うんだよ…そういえばミリアもお姫様だったか(笑)」
「私は…違う…」
いや、違わないとセレナは心の中で答えた。
伯爵家の孫…この事実は変わらない。
「まあミリアの気持ちもわかるよ。ずっとルクシアを守ってきたのはミリアだからな…それを忘れてはいないと思うよ。ルクシアは」
「まあ、だって、お姫様だもの。誰かが親切にすれば、信じちゃう。大人のカッコいい男が(笑)それに家柄と血筋はそれなりだからな…
……でも、ミリア、あなたは違う。血筋は血筋だけど中身が違う。ちゃんと“本物”だ。見てればわかる」
ミリアの目が揺れる。
「……私、間違ってないの……?」
セレナ優しくミリアの肩に手を置きながら
「間違ってなんかない。
むしろ正しい。あんたの方が、よほど“真っ直ぐ”だよ。
副官なんて──本当は、いなくなった方がいいのかもしれないね」
その言葉に、ミリアの目がほんの少し、色を取り戻した。
セレナはそれを見て、心の奥で冷笑する。ルクシアはどこをみてるんだと。
──このまま崩れてしまってもいいのか。仲間の信頼も、すべて…
(あの子は所詮お姫様…あんな奴に復讐しようとしていた自分が情けない…今はどうでもいい…仲間の“絆”なんて、壊れてもいい。
それでも…
と思った一緒セレナの思考は戸惑った。
ルクシアの真っ直ぐな性格…屈託のない笑顔…
人を魅了する歌声…
自分には無いもの…
それは失われていいものとは思えなかった…
あいつにはつながりがある。
あいつは生きなきゃいけない存在なんだ…
自分のように繋がりを失ってもいい存在ではない。
あいつを自分のようにしてはいけない。
あいつは戦うべきじゃない。
あいつは歌うべきなんだ。
ミリアやみんなのために…
だから…だから…
決着は私がつける…
セレナは自らの妖精を呼び出した。
妖精の視線はセレナを見つめているようだった。
「カルマを撃て燃やし尽くせ
我が血と肉を持って闇を屠れ明日を開け
大いなる黎明の時が来た」
セレナはそういうと短剣で腕を傷つける。
血がわずかに流れ出す。
血のついた腕を妖精にむかって突き出した。
すると妖精はその腕をまるで飲み込んだかにみえた。
セレナに激痛が走る。
これで妖精とセレナは完全に一体となった。
ルクシア… あなたは、この痛みを知らない…誰も知らない…知ってるのはアイツラだけ…一族の最期は私が始末をつける…
一人と一体に、風が通り抜ける。
だがそれは、あまりに無音で、どこか不吉だった。




