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「誰より近くにいたのに」あまりにルクシアに近くなる副官に嫉妬するミリア


場遠征中の野営地の一角。日が沈みかけた頃。


ルクシアはヴァルグレイブ副官──長身で理知的な雰囲気を持つ青年と並んで、地図を見つめていた。

その横顔は真剣で、時折交わす言葉は短く要点を突き、まるで同じ呼吸で動いているようだった。


やがて副官が一礼し、離れていく。


その姿が見えなくなったところで、ミリアが静かに話し始めた。



「最近……よくあの人と話してますね」



「え? ええ……副官は私にいろいろ説明してくださる。こんな私にでもね。戦闘については私の意見なんか聞かなくてもいいのに…」


「……私が言ってるのはそのことではありません…」

「戦いのことだけじゃない……。私、あなたの隣にずっといたのに……。

誰よりも近くにいて、誰よりも、あなたを守りたいって……ずっと、そう思ってたのに……」


ルクシアの顔がこわばる。

目の前のミリアの瞳には、怒りでも涙でもない、裏切られたような深い色があった。ルクシアは戸惑う。なぜミリアはこんなことをいうのか彼女にはわからなかった。


「どうしたの?ミリア…なんか言ってることが…」


「あの人は、伯爵の部下なんですよ。

任務で動いてるだけなのに……どうして、そんなに信用できるんですか……?

私には、ルクシア様の心が、遠くに行ってしまったように見えるんです……」


ルクシアは言葉を失い、ただ立ち尽くしていた。



火が揺れ、影が彼女たちの顔を交互に照らす。

どちらの胸にも、言葉にできない想いが重く沈んでいた。


「……ごめん、ミリア。あなたの言ってることがわからない…心が遠くって…何?それ?戦いとなにが関係あるの?私はミリアといるじゃない…一緒に戦ってる」


「……だったら、もっと信じてほしい。あの人じゃなくて……私を」


「なにを言ってるの?私はミリアを信じてる…それとあの人は関係ないでしょ…」


そしてルクシアは背を向けて、焚き火から離れていく。


その背中に向かって、ミリアは手を伸ばしかけて──やめた。


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