伯爵とルクシア 伯爵とルクシアの話合
伯爵の居館・応接間。高い天井、重厚なカーテン、香の香りが漂う部屋。
ルクシアは、軽く礼をしてから椅子に座る。椅子の脚が、わずかにきしんだ。
伯爵は穏やかな笑みを浮かべながら、手を差し出す。
「ようこそ。ルクシア殿下――いや、今はその名を名乗ることも憚られるか。ご無礼を」
「いえ……構いません。父の名が、もう……この国にとっては呪いのようになってしまったのですから…」
伯爵は一瞬、目を伏せた。
「……陛下は、民に慕われておられました。あの夜のこと、私も悔しさを忘れたことはありません」
ルクシアは、かすかに目を見開いた。父を「陛下」と呼ぶ者は、もはや身の回りにいなかった。
「……ありがとうございます」
「復讐……という言葉は、きっと殿下の心には重い響きを持つことでしょう」
「それでも、私は……あの者を許せません。父を殺し、国を貶め、民を苦しめている……あの王を」
伯爵は静かに頷いた。そして、声を低くする。
「その意志に応えましょう。我が方の情報網を使えば、国王の動きも掴めます。兵も……必要であれば手配しましょう」
ルクシアの目に、光が宿る。
「本当に……? そんなことをしていただけるなんて……」
「殿下は、かつての王家の誇りを体現されている。多くの者が、再びその旗の下に集うでしょう」
伯爵は穏やかに微笑みながら、ルクシアの目の奥を見つめていた。
彼女の声、表情、言葉の抑揚――そのすべてに、「戦略価値」と「扱いやすさ」を冷静に測る視線で。




