「再会と駒」伯爵に会うルクシア
薄曇りの空の下、古びた屋敷の応接室。
暖炉の火がくすぶるなか、重厚な革張りの椅子に座るルクシアの向かいに、歳を重ねた男がいた。
伯爵――国の内乱が激化する中、表舞台から消えていた老臣の一人。
だが、その目の奥にはいまだ鋭利な光が宿っていた。
「……お久しぶりです。ルクシア様」
伯爵は穏やかに言うが、その声には距離と計算がにじむ。
ルクシアは緊張したまま、うなずいた。
「どうして……私を探したのですか?」
伯爵は一瞬だけ視線を外し、ゆっくりと答えた。
「――アニマエウンヴラエ。例の五人組が、ついに前線に出てきました。
あなたが探していた相手です。復讐の好機かと、そう思いましてね」
ルクシアの胸がざわめく。
あの五人が戦場に――。
家族を殺し、裏切り者の国王に仕え、音の妖精を武器に無双する彼女たち。
「本当に……? アニマエウンヴラエが、戦っているんですね……!」
「確かです。もはや隠れてはいない。
だが、彼女たちの力は想像を超える。もし討つつもりなら、あなたほどの“妖精使い”でなければ無理でしょう」
伯爵は、静かに笑みを浮かべた。
(やはり、まだ幼い……心が甘い)
彼の本当の目的は別にあった。
アニマエウンヴラエの参戦によって、反国王軍は連戦連敗。
このままでは瓦解する。
一人でも彼女らに対抗できる存在が必要だった。
その候補が、ルクシアだった。
王族の血を引き、音の妖精との親和性は高い。
若く、復讐心に駆られ、扱いやすい。
「……私は、戦います。……必ず、あの五人を倒します」
真っすぐな瞳でそう言うルクシアに、伯爵は頷きながら心の中で呟いた。
(それでいい。貴方は、駒であればいい)
暖炉の火が、小さくはぜた。




