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飢えと不満、最初の軋轢 路銀の尽きたルクシア達



――乾いた野原の野宿地。焚き火の火は小さく、風が冷たい。


「もう……限界……お腹すいた……」

レリアが地面に倒れ込むように言った。


「文句言っても仕方ないだろ」

セレナが淡々と薪をくべながら返す。表情は変わらない。


「でも本当に、食べ物もないし、金もないし……これ以上どうやって生きていけばいいの……?」

フェルヴィアがレリアにそっと毛布をかける。

レリアは疲れたのか空腹でも寝てしまっていた。


「…わたし……」

ルクシアがぽつりと口を開く。


「…わたし、何もできなくてごめんなさい」

その言葉に、一瞬場の空気が止まる。


「ルクシア様はお姫様だったんだもん。そりゃ、生き延びる方法なんて知らないでしょ」

フェルヴィアの言葉は皮肉ではなかったが、微かに刺さった。


「いいんです。私、お姫様なんかじゃありません。もうとっくに……そんな立場じゃないもの」


ミリアが「そんなことない」と言いたそうにしたが、声にならなかった。


その中で、セレナは一言も発さない。黙って剣の刃を磨いていた。


月明かりの下、それぞれの顔に、困惑・諦め・苛立ち・空腹・沈黙が刻まれていた。


――小さな村の石畳。仮面の5人が通りに立つ。


「仮面で顔を隠して演奏すれば、素性はばれないわよ」

ルクシアが提案した時、セレナは初めて声を荒らげた。


「馬鹿か、お前。目立つことは敵を呼ぶだけだ」


「でも、食べるためよ。私たちが死んだら意味がないでしょ……」


「目立たずに生き延びる、それだけが正解だと思ってるの?」


睨み合ったまま数秒。フェルヴィアが「まぁまぁ……」と割って入る。


ミリアがそっとルクシアの手を握る。「一緒に、頑張りましょう」と。


結局、セレナ以外の多数決で演奏が決定された。


――そして始まった、仮面の演奏。


最初は道行く人々も訝しんだが、ルクシアの歌声が、演奏が辺りに染み込み始めると、足を止める者が増えていった。


魔術のような旋律。妖精のような響き。

その場の空気が、柔らかく包まれていく。

彼女らの歌声と演奏は彼女らのものだけではなかった。

妖精の持つほんとの力が彼女らの歌声と演奏を祝福していた。

彼女らと一緒に妖精達も歌い奏でていた。


セレナは、仏頂面で後ろから警戒していたが、ふとそのことに気づいた。

セレナにはわかっていた。

これがセレナの宿命だった。



立ち止まって聴いている子どもが楽しそうにほほ笑んでいた。

大人も。

彼らもまた妖精の持つほんとの力によって祝福を授かっていた。


ルクシアの歌声に微笑む人々を見て、セレナはほんのわずかだけ――口元が緩んでいた。

そしていつしか仲間に加わっていた。


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