撤退後の小屋にて 軋轢と破綻
フェルヴィアは血のにじむ肩を押さえて、ただ黙っていた。
レリアは一言も喋らず膝を抱え、ミリアは戸口で外を見ていた。
セレナは剣を磨いていた。
その横で、ルクシアが呟くように言った。
「……私たち、こんなにも弱かったんだね」
誰も答えなかった。
その夜、フェルヴィアは傷のせいで熱が出て眠れず、ずっと震えていた。
リレアは頭の中に出てくる兵士の叫びで眠れず時々泣いていた。
ミリアは、フェルヴィアの傷の手当てをしていた。
セレナはずっと外に目を向けていた。
この夜は彼女たちにとって辛い暗いものとなった。
戦いの夜は、思っていたよりも冷たかった。
焚き火の光が揺れるたびに、誰もが黙り込み、闇がじわりと心に染みていく。
小屋の隅で、レリアが膝を抱えていた。
目は虚ろで、焦点を結ばない。
乾いた唇が震え、小さく、誰にも届かない声で何かを呟いている。
「……フェルヴィア、どこ……フェルヴィア……怖い……」
それに気づいたミリアが、静かに立ち上がった。
眉間に皺を寄せ、近づいて、怒りとも失望ともつかない声で言う。
「……いつまで、こうしてるの。一緒に来た以上、覚悟はあったはずよ」
フェルヴィアが目を開けて怒りに満ちた目でルクシアを睨みつけた。
「あんた、やつらとと同じだよ…」
ミリアが目を見開く。
だがすぐに唇を固く結び、返す言葉はなかった。
レリアはうずくまったまま、震え続けている。
フェルヴィアが隣にしゃがみこみ、そっと肩を抱いた。
「大丈夫だよ、もう誰も傷つけさせない」
小屋の片隅で、セレナがそれを見ていた。
何も言わない。表情も変えない。
ただ目だけが鋭く、冷たい光を帯びていた。
夜が来た。
セレナは焚き火の炎を見つめていた。
ルクシアの次の襲撃も上手くいかないだろう。この有様だ。
今ならやれる…
やれるはずだ…
しかしセレナの中にわずかな混乱が生まれていた。
あの黒い影たちのこと…
それがなぜ国王と…
それとルクシアへの興味がセレナの決心を鈍らせていた。
なぜルクシアやミリアやリレアフェルヴィアが妖精使いなのか…
一族が前の国王に道具として使われたことは忘れたくても忘れるわけはない…
ミリアやリレア、フェルヴィアは…
…それはなぜ…
セレナはまだ彼女らも実験の犠牲になっていたことを知らなかった…
「……そばにいればいつでもやれる…ルクシアのためじゃない…ただ今は違う…」
そうセレナは自分自身に言い聞かせていた…
ルクシアは焚き火のそばで膝を抱えながら天井を見上げていた。
皆の声も、沈黙も
「……全部私のせいだ…」
と、小さく呟いた。
彼女は、強くない。
ルクシアの視界がうっすらと歪んでいった。涙が流れていった。
5人の心を少しだけ結び止めていた糸が 切れかかっていた…




