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未熟な咆哮 ルクシア達の襲撃



――王都外縁・夜明け前


霧が薄く漂う石畳の道を、五人の少女が走っていた。

肩には、刻印とともに宿る妖精たちの微かな気配。


誰も喋らない。

この行動がどれほど危険であるか、それぞれの心にうすうす感じていた。


「ここから、もう戻れないよね」

走りながら息を荒げながら小さくフェルヴィアが言ったが、返事はなかった。


――国王の乗る馬車を襲う。

このあと早朝から、王は巡察のため街外れの砦に向かうという。

話を市場で聞いた5人は一か八かの賭けに出た。

5人は街道沿いの森に潜んでいた。

やがて朝霧も陽の光とともに薄くなっていった。

どれだけ時間が経ったのかは誰も考えてはいなかった。ただただその瞬間だけを待っていた。


やがて、王の騎馬兵を伴った馬車が遠くに現れた。


ルクシアは、両手を組み、詠唱に入る。小声で祈るように。

5人もそれぞれに詠唱を始めていた。

だんだんと馬車が近づいてくる。

鳥達が鳴き出した。朝日が街道沿いの森を照らしていた。

あるゆるものが朝日を受けて輝き出していた。

馬車が止まる。先頭の騎馬兵が馬車に駆け寄って来た。

その馬車にはたしかにルクシア達の標的である現国王の顔があった。

騎馬兵が先頭の持ち場に戻ると合図をする。すると弓兵が準備を始める。

一斉に矢を放った。

その矢はルクシア達がいる森へと吸い込まれていった。

鈍い矢切音をたててルクシア達の周囲に降り注いだ。

一部は木に阻まれたが威嚇するには十分だった。

ルクシア達は一瞬なにが起こったか分からなかったが木や足元に刺さった矢をみて恐怖いと思い始めていた。

その間にも剣を構えた兵士がルクシア達のいる森に突入してくる。

鋭い叫びとともに、兵士たちが突進してくる。


◇第一の襲撃:詠唱の中断と恐怖


「来ないで……!」

リレアは必死になんとか剣をを構えたが、手が震えていた。


ルクシアは続けて詠唱しようとしたが、

突き出された槍の切っ先が目前に迫り、言葉を失う。

フェルヴィアは盾を掲げたものの、

兵士の剣をまともに受けて膝が崩れた。


「こんなの……聞いてないよ……!」


セレナは迷いなく剣を抜いた。


「下がってろ」

淡々と兵士の一人を斬る。その剣筋は美しく、冷たかった。


ミリアも怯えながらも、震える手で剣を振るった。

しかしそんなことはなんの役にも立たなかった。

兵士達の顔は笑っているようにみえた。

突然口笛がなった。

すると兵士達は一斉に退却を始めていた。

わけのわからないままルクシア達はその場にいた。

手は震え汗が顔をぬらしていた。

口をただ呆然と開けて。

セレナとミリアは血のついた剣を支えに体をなんとか支えていた。

ルクシアには無力感だけが残った。

声は聞こえなかったが恐怖と無力感と挫折と悔しさで顔はぬれていた。



◇第二の襲撃:反省と成長、しかし……


数日後、ルクシアたちは再度、襲撃を試みた。


今度は離れた位置に陣取り妖精を召喚する形に切り替えた。

だが、妖精の召喚はできたものの

王の兵士たちは彼女たちの位置をすぐに突き止め、少女たちに一斉に矢を放つ。

とうとうフェルヴィアが矢を肩に受け、悲鳴を上げて倒れた。

レリアは慌ててかけ寄る。


セレナだけが冷静だった。

だが、彼女一人では守りきれない。


「……撤退だ!」


初めてセレナが声を荒らげた。

何もかもが未熟だった。

命があったのが不思議だった…


◇撤退後の小屋にて(夜)


フェルヴィアは血のにじむ肩を押さえて、ただ黙っていた。

レリアは一言も喋らず膝を抱え、ミリアは戸口で外を見ていた。


セレナだけが剣を研いでいた。

その横で、ルクシアが呟くように言った。


「……すまなかった…」


誰も答えなかった。

そんな言葉で済むわけはなかった。

だが今はそんなことしか言えないルクシア。

それしか言えない自分が情けなかった。

セレナは目線だけルクシアに一瞬向いていた。

だがすぐ剣を磨いていた。


その夜、フェルヴィアは熱が出てずっと震えていた。

リレアは頭の中で、兵士の叫びを繰り返し聞いていた。ずっと眠れなかった。


ミリアは、焚き火の前に座っていたルクシアの背中を無言で何度も撫でた。

「ルクシア様大丈夫ですよ。みんないますから

そういうと水筒を差し出した。


ルクシアは誰にも見られないように、そっと一筋、涙をこぼした。

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