【リレアへの説得】【フェルヴィアとの出会い】
森の奥、静かな小川のせせらぎが聞こえる場所で、リレアは木の根に座っていた。
日差しが木々の間を縫い、彼女の肩と膝を柔らかく照らしている。
「……仲間になってほしいの」
ルクシアはそう言って、少し離れた場所に腰を下ろした。
リレアは顔を伏せたまま、小さくかぶりを振った。
「私は……無理。怖いの。誰かを傷つけてしまうのが……自分が壊れてしまうのが」
彼女の手は震えていた。細い指先は、膝の上でこわばっていた。
ルクシアは静かに、その手の横に手を置く。
「怖くない人なんて、いないわ。私も……そうよ。戦うたびに、自分が変わってしまう気がする。でも……」
そこで言葉を切り、深く息を吸い込んだ。
「でも、一人じゃできないの。あなたの力が必要なの、リレア。誰かのために歌える人が、必要なの」
リレアは、ほんのわずかに顔を上げた。瞳の奥に、揺れる水面のような迷いがあった。
「……フェルヴィアが行くなら。彼女が一緒にいるなら……私も、行けるかもしれない」
その名前に、ルクシアは静かに頷いた。
「わかった。会わせて」
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フェルヴィアは、村の外れの崖で一人、薪を抱えていた。
赤銅色の髪を高く結い、日焼けした肌には土の匂いが染みついていた。
「おーい! 誰かと思えば、リレアの護衛様じゃないか!」
ルクシアが声をかける前に、彼女の方から豪快に笑いかけてきた。
「ルクシアです。あなたが……フェルヴィア?」
「そう! 冒険者予備軍のフェルヴィア・コレール様だよ! で、何の用?」
ルクシアはその勢いに一瞬押されながらも、姿勢を正す。
「仲間になってほしいの。世界を変えるために、力を貸してほしい」
その一言に、フェルヴィアは口を開けたまま一瞬固まったが――次の瞬間、大声で笑った。
「マジで!? それ、私が一番聞きたかった台詞かも!」
薪を地面にどさりと置いて、拳をぐっと握る。
「やるよ! もちろんやる! リレアも行くんでしょ?」
「うん……彼女は、あなたと一緒ならって」
「じゃあ決まり。あたしがあいつの背中を押す! あんたの背中も、ついでに支えてやる!」
ルクシアは、そんなフェルヴィアの笑顔に、久しぶりに心からの安堵を覚えた。
そして、内気なリレアと、太陽のようなフェルヴィア。その二人が揃って並ぶ姿を想像し――ようやく、少しだけ希望の形を思い描いた。




