リレアとの出会い ――草原にて
草原の風は優しく、草花の匂いを乗せて三人の衣の裾を揺らしていた。
乾いた土の道を歩く足音が、リズムのように一定に響く。
ルクシアが歌い、ミリアとセレナが演奏をする。
そうやって三人は旅を続けてきた。
ふと、遠くから歌声が聞こえてきた。
澄み渡るような声。空を透かすように、まるで陽光が音になって降り注いでいるかのようだった。
ルクシアが立ち止まり、顔を上げた。
ミリアもセレナも、その歌声に引き寄せられるように顔を見合わせた。
「……聞こえる?」
「誰かが……歌ってる」
声の方角を確かめながら、三人は足を速めた。
草原の緩やかな斜面を登る小道の先、そこには小さな丘があった。
丘の頂きには一人の少女。
腰をかがめて草花を摘みながら、静かに歌っていた。
陽の光を受けて揺れる髪と、白い衣。
彼女のまわりだけ、時間が止まっているようにも見えた。
少女――リレアは、突然立ち止まった。
三人に気づいたのだ。
彼女はすっと立ち上がり、手元の短剣に手をかけた。
目が鋭くなる。声は止み、風の音だけが残った。
ルクシアが、一歩前に出た。
「怪しいものではありません!」
その声は明るく、しかし真摯だった。
ミリアはすかさずルクシアの前に出る。
護るように、一歩も引かず睨みを利かせる。
その背後でセレナは無言のまま、静かにリレアを観察していた。
ルクシアは深く息を吸い、自らの名を高らかに名乗る。
「私は──
Luxia Caelestia Regnaria。
レグヌム・カエレスティスの、王女です」
その言葉に、リレアの表情が動いた。
短剣からそっと手を離し、ゆっくりと姿勢を正す。
「……ルクシア様」
リレアは、その名を確かめるように小さくつぶやいた。
警戒は完全に解けたわけではない。だが、その声には、かすかな安堵と、なにか懐かしさすら滲んでいた。
そして風がまた吹く。
誰も声を発せず、ただ互いの存在を見つめ合った。
歌が止んでも、何かが響き合っているような、そんな時間だった。
草の香りがする。
風が揺れる。
けれど胸の奥は、張りつめたままだ。




