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《焚き火の囁き》セレナの力の違いを問いただすミリア
夜の森は静まり返り、焚き火の小さな炎だけが闇を押し返していた。
ルクシアはすでに毛布に包まり、穏やかな寝息を立てている。
残されたミリアとセレナは、並んで火を見つめていた。
炎の揺らぎが二人の横顔を照らし、時折、パチリと弾ける音が会話の合間を縫う。
やがて、ミリアが低い声で切り出した。
「……セレナ。あなたの歌、アニマエウンヴラエとよく似てるよね」
その言葉には探るような響きがあった。
「同じ歌……そんな気がしてならない」
セレナは視線を焚き火に落としたまま、しばし沈黙する。
火の粉が夜空に舞い上がり、消えていく。
「……似ているのかもしれない」
彼女は静かに口を開いた。
「けれど、私にも理由はわからない…」
ミリアは炎を見つめながら、短く息を吸う。
「……本当に?」
問いかけは鋭い。
セレナはわずかに唇を曲げて笑ったが、その笑みには苦味が滲んでいた。
「知っていても、いま話すべきことじゃない」
横目でミリアを見やり、静かに続ける。
「……あなたはルクシアの人だから」
「……どういう意味?」
ミリアの眉がひそめられる。
だがセレナは再び火に視線を戻し、炎の中へ言葉を溶かすように呟いた。
「ただの独り言よ。忘れて」
火がぱちりと音を立てる。
それが最後の会話を区切るように、二人の間に重い沈黙が落ちた。




