野宿と孤独 歌でつなぐ心
街道を避け、人里を避ける旅は、思っていた以上にルクシアには過酷だった。
ミリアは多少経験があった。
日が暮れたあとは、森の奥や崖の影に身を寄せて、冷えた空気の中で身体を丸めた。
「ルクシア様寒くありませんか…」
「……寒い…」
思わずこぼした言葉に、ミリアは火打石を鳴らしながら。
「ルクシア様には厳しい旅だと思いますが、どうか耐えてください。故郷に着くまでの辛抱です。それまで私がなんとしてもルクシア様をお守りします」
「ありがとうミリア…」
ミリアの弦楽器が、夜の静寂に寄り添うように鳴り始めた。ミリアは子供の頃、両親とともに聞いた、あのかつての“王女”の歌を歌った。
だがルクシアは、うつむいたままだった。
火の揺らぎが、彼女の頬の影を深く落とす。
毎日ミリアは歩きながらでも楽器を奏でて歌った。
どこか拙く、でも諦めることなく。ときに独り言のように、口ずさんだ。
「……しつこいわね、ミリア」
ある時、ついに唐突にルクシアが口を開いた。
火の明かりに照らされたその顔は、疲れてはいたが、ほんのわずかに笑っていた。
「しょうがありませんよ、昔からこの歌が私の幸せなんですから」
「……仕方ないわね。じゃあ、次は私の番」
そう言って、ルクシアが歌い始めた。
その声はまだかすれていたが、森の中を静かに満たしていくようだった。
翌日からは二人は辛い道のりを奏でながら歌いながら乗り切っていった。
歌は二人の絆を一層強いものにした。




