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《炎に呑まれる館》



セルヴァーナ伯爵の館

儀式を終えて数日。

ルクシアとミリアは仲間探しの旅へ出る支度を整えていた。


その静かな朝――突如、地を揺るがす轟音が館を震わせた。


「敵襲――! 王国軍だッ!」

兵士の叫びと同時に、窓の外に火の雨が降り注ぐ。

兵たちが慌ただしく走り、剣と魔術が交錯する音が広間に響いた。


ルクシアは立ち上がり、剣を抜く。

「……来たのね。国王の犬ども……!」


だが、炎の中に現れた影を見た瞬間、ルクシアの瞳が凍りついた。

黒衣、仮面、異様な気配。

その中心に、彼女の憎き仇――

「アニマ・エウンヴラエ」


仮面の奥から響いた声が、嘲るように館に響いた。

「探していたぞ、ルクシア。仲間を求める儀式など愚かしい……

その波動が、貴様の居場所を示してくれた。

復讐を夢見る姫君よ、我ら自らが狩りに来てやったのだ」


ルクシアは唇を噛みしめ、前へ出る。

「上等よ……今ここで――!」

ルクシアは歌おうとする。


だがその腕を、セルヴァーナ伯爵が強く掴んだ。

「待て、ルクシア!」


「離してください!」


「いいか、今のお前では勝てぬ! あれは格が違う!」

伯爵の瞳は鋭くも真剣だった。

「ここで死ねば、すべて終わるのだ。お前には旅に出て、仲間を集める役目がある!」


「でも……私の仇が目の前に……!」


「だからこそだ! 今は生きろ! その剣は未来のために振るえ!」


そのやり取りの隣で、ミリアも剣を構えていた。

「なら、私が! 戦います!」


しかし伯爵は首を振る。

「お前の役目はただひとつ――ルクシアを守ることだ。

私には兵たちがいる。ここは任せろ」


言い切る伯爵の声に、ミリアは拳を握りしめ、渋々ルクシアのそばに立った。


その瞬間――。

炎の影の一人が、疾風のごとく迫る。


「来るッ!」

ミリアが剣で受け、ルクシアも応戦するが――力の差は歴然だった。

弾かれた剣が火花を散らし、ルクシアは地に叩きつけられる。

胸に広がるのは、恐怖と、圧倒的な敗北の実感。


「やはり弱いな……」

影の冷たい声が落ちた。


――その刹那。


「退けッ!!」

セルヴァーナ伯爵が巨剣を振り抜き、二人の前に立ちふさがった。

黒衣の刃を受け止め、血を吐きながらも押し返す。


「今だ……行け! ルクシア、ミリア……! 生き延びろ……!」


「伯爵様……!」


ルクシアの叫びも届かぬまま、炎と剣閃が交錯する。

伯爵の犠牲が作った一瞬の隙をついて、兵が二人を押し出した。


ルクシアの頬に、熱と涙が流れる。

「私は……私は……また守られて……!」


館が炎に包まれ、夜空を赤黒く染める中、二人の少女は走るしかなかった――。

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