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《二人の温度差》祖父を失っても平然としているミリア



戦いの夜が明けて、森の外れ。

黒く煤けた空を背に、ルクシアとミリアは小さな野営をしていた。


火は焚かれていない。昨夜の惨劇を思い起こさせる炎を、ルクシアが拒んだからだ。

朝靄の中、二人は並んで腰を下ろしていたが、互いに言葉はなかった。


やがて、ルクシアが小さく口を開いた。

「……私が……復讐にこだわったせいで、伯爵を……」


声は震えていた。

唇を噛みしめ、視線を落とす。

――あの瞬間。伯爵が剣を振るい、自分たちを逃がすために立ちふさがった姿が脳裏に焼き付いて離れない。


自分が狙われなければ。

自分が仇討ちを叫ばなければ。

伯爵は……。


「……ルクシア様」

隣から、軽やかな声がした。

ミリアは妙に晴れやかな表情をしていた。

その顔に、涙の影はない。むしろ昨夜よりも少し明るくさえ見える。


「お祖父様のこと……気に病まないでください」

「え……?」


ルクシアは驚きに顔を上げた。

ミリアは緊張している様子はあったが、それでも唇に笑みを浮かべていた。

「もともと、あの人は厳しくて……正直、疎ましく思ったこともありましたから。

最後に、ルクシア様を守って散ったのなら……お祖父様も本望だったと思います」


「……そんな、言い方……」

ルクシアは言葉を失う。

自分が抱える罪悪感と、ミリアの軽やかさ。

その落差が胸に突き刺さった。


彼女が大切に思っていた人を失ったのに、どうして泣かないのか。

どうして、そんなふうに……。


ルクシアは、暗い顔をして小さくうなずいた。

「……そう、ね。そうかもしれないわね」

努めて優しい声を作る。ミリアを傷つけないように――。


だが、ミリアにはその「気遣い」が届いてはいなかった。

「はい! だから、気を落とさないでください。ルクシア様が前を向いてくれれば……私はそれで」


朝の光が木漏れ日を落とす中。

ルクシアの沈んだ影と、ミリアの明るさは、あまりにも対照的だった。

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