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◆ 学院編 ガーゴイル -15-

 上空を飛ぶ小型ガーゴイルは、残り一体。

 だが、狡猾にも俺とアルチュール、オベールの真上を旋回しているため、リシャールとレオは矢を放てない――落下すれば、俺たちが直撃を受ける危険性がある。

 地上では俺たち三人を含め、まだ動けるガルディアンたちが剣を構えて息を詰め、機を窺っていた。

 アルチュールが間合いとタイミングを測り、オベールは斬撃の角度を定める。俺は一歩前へと踏み込み、標的を引き込む役を担った。

 張り詰めた空気の中、刹那の静止が訪れる。次に訪れる衝突を誰もが予感し、全神経が眼前の獲物へと集中していた。


 ガーゴイルが突進してきた瞬間、俺たちの連携は完璧だった。

 俺が左の翼、アルチュールが足を切り裂き、首を狙ったオベールの一閃が致命傷を与える。

 その合間に、テラスで状況を見守っていたリシャールとレオが、他のガルディアンたちが仕留めたと思った直後に再び動き出した一体に的を定め、矢を放った。落下の軌道を計算し、正確にターゲットに命中させ、とどめを刺す。

 衝撃が地面に走り、ガーゴイルは最後の呻きと共に完全に倒れ伏す。その場に一瞬の静寂が訪れる。


 残るは、デュボアが対峙している大型のガーゴイル一体。

 その巨体はすでに無数の傷を負っていた。黒狼ガーロンの牙が幾度も食らいつき、デュボアの剛腕から放たれる一撃一撃も確かに命中している。皮膚には亀裂が走り、血を流しながらも奴はまだ動いている。

 唸り声を上げては灼熱の火球を吐き出し、その炎は焦土を広げ、黒煙を巻き上げてなお勢いを失わない。

 まるで痛みなど意に介さず、己が滅ぶその瞬間まで戦い続けることを宿命づけられているかのような、異様なしぶとさだった。


「デュラン副警備官とモロー隊長の二名を残し、ガルディアン後退、撤収! 怪我を負った者を救護室へ。安全な場所に下がれ!」

 オベールが低い声で指示を飛ばす。

 炎と煙の中、その声音には揺るぎない気高さが宿っていた

「コルベールとシルエット! お前達も安全な場所へ」

 ガルディアンたちは素早く従い、傷ついた仲間を引き連れて後方へと退避する。俺とアルチュールも、同様にオベールの指示に従い、戦闘の射線から外れて安全な位置へと下がり、待機した。

 オベールが鋭く声を張る。

「副官、隊長! デュボアに加勢する。フォルメシオン(フォーメーション)ヴァン!」

「了解!」

 デュランが短く答え、モローが小さく頷いて魔法障壁を展開し、盾を構えたオベールと共に前線へと突き進んだ。飛んでくる火球が地面を抉り、熱風が鎧を叩く中、その背は微動だにせず真っ直ぐだった。剣を握りしめる腕に力がこもり、蒼灰の瞳には冷たい決意が宿っている。

 そして次の瞬間、炎の渦を切り裂くように踏み込み、デュボアの脇に並び立った。


 デュボアの剛腕がうなりを上げ、巨体の腹部を打ち抜いた。続けざまにオベールが大地を蹴って斬り込み、モローとデュランの障壁が火炎をはね返す。四人の連撃は一瞬の隙を逃さず噛み合い、ついに大型ガーゴイルは倒れ込んだ。


 地響きと共に巨躯が傾き、誰もが勝利を確信した。

 胸元の奇石からネージュの声が弾む。

《よっしゃーー!》

 その背後では、安堵と歓喜の声が重なり合い、生徒たちが喜びを分かち合っていることが伝わってきた。


 その場に立つ者たちもまた、剣を下ろし、肩を落とし、わずかに緊張を解こうとした。

 すでに勝敗は決したと、そう思いながら。


 その刹那――。


 地に伏したはずの怪物が、不意に身を震わせる。血に濡れた口腔に赤熱の光が宿り、最後の力を振り絞るように火球を吐き出す。

 その軌道の先にいたのは、黒狼ガーロンだった。


お越し下さりありがとうございます!

(* ᴗ ᴗ)⁾⁾. (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾

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