表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/225

◆ 学院編 帰還 -余談2-

「要点だけ話すとだな……、頭骨に触れた瞬間、意識が冥界に引き込まれた。正確には、呼ばれた、って言った方がいいな」

「呼ばれた……?」

 ルクレールが眉をひそめ、言葉の意味を噛み砕こうとする。

龍脈(エリオス)災害(デザストル)で分断されたフェンリルの“中身”が、冥界に留め置かれていた。骨は錨としてこの世界に残っていて……俺は、そこに触れたことで繋がった」

「……で、その結果が――」アルチュールが、白い犬を見る。「フェンリル、というわけか」

「そういうこと。それから、向こうではネージュも呼ばれていた。ネージュの状態は……、その、いつもの彼とは少し違ったけど……会ったよ。今はネージュも無事に帰還し、オグマやマルス、シエルたちと遊んでいる」

「それが、さっきの通信……」

 アルチュールが、ようやく腑に落ちたという顔で呟いた。


 どうやら、“要点だけ”のつもりでも、十分すぎるほどの内容だったらしい。

 アルチュールとルクレールが視線を交わし、次いで、同時に俺へと戻してくる。

 しばしの沈黙。

 ルクレールが、ゆっくりと息を吐いた。

「……規模がでかすぎて、理解が追いつかん」


「まあ、こうやって骨もフェンリルに戻れたことだし、終わりよければ全てよし! ということで……」

 俺は足元に視線を落とし、「これで安心しただろ?」と彩尾鳥のダンサーに声を掛ける。

 すると、ダンサーは一瞬、首を傾げてから、こくり、と縦に振った。

「お前、あの骨が神獣って分かってたんだな。生体反応があったから、助けなきゃって思ったのか?」

 問いかけに、ダンサーは鋭い(まなじり)をさらに尖らせつつ、口角を持ち上げて笑い、もう一度、首を縦に振った。

 なんだろう。この笑顔がまた……、見る者を一瞬で黙らせる、修羅場をいくつも潜り抜けてきたヒットマンのようだ。

 しかし正直なところ、もし骨のすぐそばに立っているダンサーを、俺たちではなく他の人間が見つけていたら……、「お前が()って、食ったんだな?」と思われても、まったく不思議ではなかったはず。

 M16のスナイパーライフルがやたらと似合いそうで、うっかりミニチュアを作って背中に背負わせてみたくなった。


「よし。じゃあ、心残りはないな? 馬車に戻る気になったってことでいいな?」

 再び、こくり。

「さて」俺は立ち上がる。「そろそろ、殿下たちも心配してる。早く戻ろう」

 アルチュールが頷く。

「そうだな。馬車に戻ったら、シャワールーム(ラ・サル・ドー)で怪我とかしてないか見せてもらうぞ」

「大丈夫だって。どこも怪我してない。そんなに心配なら、寮に戻ってから全身くまなくチェックしたらいいじゃないか」

 俺は肩を竦めた。

「そういう問題じゃない」

 アルチュールは低く息を吐き、次の瞬間、俺を引き寄せた。

 腰に腕が回り、逃げ場がなくなる。

「目を離してもいないのに、どうして毎回、こんな危険なことに巻き込まれるんだ」

 俺の額に自分の額を押し付けるようにして、ぼそりと言う。

「……こっちの心臓がもたない。セレス」

「ごめんな。もう、正体不明のものには触らないようにする」

 さすがに、そう答えるしかなかった。


「おい……。お前ら」

「ん?」

 俺たちは二人同時に声をした方へ振り向いた。

「俺の存在、完全に忘れてるだろ?」

 冷ややかな声。

 そこには、アルチュールを睨みつけているダンサーの隣に、目つきの悪いのが一人増えていた。

「今な、お前らが半年以内に別れるよう、呪っておいた」

 増えた方――ルクレールが、やけに穏やかな声で言う。


 ……大人げねぇ。


 アルチュールは俺を離し、即座に言い返す。

「絶対に別れない! そもそも、既に婚約済みだ」

「だから呪ったんだろ!」

「そんなもの、跳ね返してやる。今も、これからも、ずっと俺のセレスだ。頭の先からつま先まで、全部、俺のだ!」

「魔眼、開放すっぞ!」


 完全に売り言葉に買い言葉。聞いていて恥ずかしくなる。

 なんなんだよ、この二人……。

 そのやり取りを横目で眺めながら、俺は足元に視線を落とす。


「疲れてるだろ? 抱いてってやるよ」

 しゃがみ込んでダンサーに手を伸ばすと、ダンサーは一瞬だけ目を見開き、次の瞬間、素直に腕の中に収まった。

 軽い。温かい。


「イオンデーラもノアールも、行くぞ。じゃあ――」俺は振り返り、フェンリルに手を振る。「そういうことで。元気でな、シオン」


「………………」


 瞬間、フェンリルが固まった。

 数秒。

「ちょ、ちょっと待て!!」

 慌てた声が上がった。

「ん?」

 俺は首を傾げる。

「わ、私は……フェンリル、だぞ!?」

「うん」

「高位神獣だぞ!?」

「うん」

「……その……、セレス?」

 声のトーンが、急に変わる。

「お前は……まだ、使い魔と契約していないようだが」

「してないな」

「ならば……」

 シオンは、やや視線を逸らしつつ言った。

「わ、私が……なってやってもいいんだぞ」


 なんだ、このツンデレは……?

 でもなぁ……。


「……断る」

「えっ」

「断る。俺、カナード寮監の空飛ぶ風蛇みたいな使い魔、いいなーって思ってて。フェンリルは飛べないだろ?」

「なっ……」

「なので、断る」

 シオンは引かない。

 一歩、いや、半歩、俺に近づく。

「ま、待て……!」

「待たない」


 俺は、ため息をついた。


「使い魔は空が飛べるのがいいです。動物は、もうネージュがいるのでうちではこれ以上、飼えません! ダンサーですら例外なんです!」


「……動物……」

「身体も戻ったんだし、森へお帰り。ちょっと小さいけど、頑張れ。お前なら何とかなるって。多分」

 俺は真顔だ。

「……完全には戻っていない。魔力が、まだ足りん。一人で森に戻るのは……少々、厳しい」

「冥界の闇を遠吠え一つで粉々に砕いたくせに」

「……そっ、それだ! それ、それ! それで、最後の力を全部使い切った!」


 嘘つけ。


「そんな一時のノリで全力を使い切るタイプは、使い魔として採用していません」

「うっ、……なら」

 シオンが、少し考えてから言う。

「動物枠がいっぱいなら、人型になれば……、セレスと一緒にいさせてくれるか?」


 嫌な予感。


お越し下さりありがとうございます!

(* ᴗ ᴗ)⁾⁾. (♥ ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾


押しかけ使い魔……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ