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第二十一話・第二節:怪物と成り果てた者

 轟音が響いた。


 カインが疾駆する。


 地を砕きながら、黒き巨躯が弾丸のように俺たちへと突進してきた。


「ッ……!」


 俺は即座に跳び退る。次の瞬間、カインの爪が俺のいた場所を薙ぎ払い、地面を深く抉った。


 かつての仲間——今は、ただの”怪物”だ。


「これが”進化”だと?」


 俺は低く呟きながら、“夜喰らい”を構えた。


「こんなものが進化であってたまるか!!」


 俺の叫びに、アダムが薄く笑う。


「君のような”個”の感傷など、進化の前では何の意味も持たない。これは人類が次なる存在へと至る過程——“進化した人間”だ」


「進化、ね……」


 カインは、もはや言葉すら発しない。喉の奥から漏れるのは、獣のような唸り声。


 かつて戦友だったはずの男は、今やただの化け物になり果てた。


「……なら、こいつを喰らって俺の糧にしてやるよ」


 俺は歯を食いしばる。


 理性を持ったまま、最強になる。

 それが——カインに対する、せめてものはなむけだ。


「エリシア!」

「ええ!」


 エリシアが輝きを放つ。


 眩い閃光が戦場を染めた。カインの動きが鈍る。


 俺は一瞬の隙を逃さない。


「おおおおッ!!」


 踏み込む。


 漆黒の大剣“夜喰らい”がうねり、カインの腹部へと振り下ろされる。


 ——が、その刃は寸前で止まった。


 カインが腕を交差させ、防御の姿勢を取っていた。


「チッ……!」


 装甲が軋む。火花が散る。


 カインの力は、まだ衰えていない。


「なら……!」


 俺は刃を跳ね上げると同時に、カインの腹へと膝を叩き込んだ。


ズドンッ!!


 鈍い衝撃音と共に、カインの巨体が弾かれる。


 ——このまま押し切る。


 俺は刃を振りかぶり、決着をつけるべく駆け出した。


 ——その時。


「……面白いな、“最強の死者”よ」


 アダムの冷たい声が響いた。


 直後、——ガシャアアアン!!


 重々しい音と共に、周囲の扉が一斉に開かれる。


 ……くそ、嫌な予感がする。


 数秒後、そいつらは姿を現した。


 黒曜の騎士——オリジン・コアの最精鋭部隊。


「増援かよ……」


 俺は舌打ちしながら、ゆっくりと“夜喰らい”を構え直した。


 カインと戦っている最中に、さらにこの数。


 ……いや、関係ない。


「まとめて潰す……それでいいだろ?」


 俺は、騎士たちを見据えながら嗤った。

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