第十八話・第四節:天使の刃
——白い光が、俺を呑み込む。
焼けるような感覚が全身を襲い、意識が一瞬、遠のきかける。
しかし——俺は膝をつくことはなかった。
「……ふざけるな」
ギリ、と奥歯を噛み締める。
仮面の奥で、俺の瞳が暗く光った。
“選択”だと?
この俺に、選ばせるつもりか。
何を、誰を、どの道を——?
「……お前に決めさせるつもりはない」
俺は闇を纏う。
白と黒が激突する。
天使のような少女が、優雅に宙を舞いながら微笑む。
「あなたはまだ気づいていないの?」
俺の視界が、一瞬歪む。
何かが……見せられている。
(……これは……?)
——白い光に包まれた研究施設。
——無数の培養槽に浮かぶ、人間のようなもの。
——その中心に……俺によく似た存在がいた。
「お前……俺に何を見せている?」
「真実よ、蒼真」
少女の声は、澄んでいて冷たい。
「“オリジン・コア”は、人類の進化を求めた。その果てに生まれたのが、私——そしてあなた。私はあなたと同じなの」
(……俺と同じ?)
俺の中で、仮面の意思がざわめく。
「……違う」
俺は叫ぶように、力を解放した。
「俺はおまえじゃねえ!」
白い光と黒い闇が激しく衝突する。
少女が、ほんの少しだけ表情を変えた。
「……そう。なら、その証明をしてみせて」
次の瞬間——彼女は姿を消し、俺の背後に現れた。
“天使の刃”が、俺の背を貫こうとする。
——だが、遅い。
「……もう、見飽きたぜ」
“闇の刃”を振るう。
白と黒の閃光が交錯する。
——光と闇がぶつかり合う。
少女の剣が軌跡を描き、俺の喉元を狙う。
だが、俺はその斬撃を紙一重でかわし、闇の刃を振るった。
キィンッ——!
激しい衝突音が響く。
「……あなたの闇、先ほどよりも研ぎ澄まされているわ」
少女は微笑んで言った。
だが、その瞳は氷のように冷たいままだった。
「当たり前だ」
俺は足を踏み込み、一気に間合いを詰める。
「戦うたびに、俺は強くなる」
“闇の刃”を振るう。
だが——
「それは、私も同じ」
少女の剣が、白い光を帯びる。
一瞬、閃光が視界を奪い——
次の瞬間、俺の腹部に鋭い衝撃が走った。
「……ッ!」
吹き飛ばされる。
背後の瓦礫に激突し、俺は荒く息をついた。
「……いいね。もっと、もっとだ」
だが、その痛みさえも、俺の闇を深めていく。
「あなたは戦いの中で進化する。私もまた同じ」
少女が宙に舞い、手を掲げた。
「次は——“絶対の光”を見せてあげるわ」
天井の崩れたダンジョンの空間に、純白の光が満ちる。
光の粒が舞い、まるで天使が舞い降りるような神聖な光景。
「……そうか」
俺は歪んだ笑みを浮かべた。
「なら、俺も”絶対の闇”を見せてやる」
仮面が熱を持ち、俺の身体を侵食する。
視界が、黒に染まる。
そして——
真なる闇と光が、激突した。




