第十五話・第二節:カボチャ頭の大群
闇が蠢いている。
ダンジョンの奥へ進むにつれ、空気はどこか異質なものへと変わっていた。
「……蒼真、何かいるわ」
エリシアが警戒するように囁く。
その言葉を証明するように——
カタカタカタ……
ギギ……ギギギ……
聞き覚えのある、不快な音が周囲から響き渡る。
そして、通路の暗がりから——
「カボチャ、カボチャ、カボチャァァア!!」
オレンジ色の異形が一斉に飛び出してきた。
カボチャの頭部を持つ者たち。
それも、一体や二体ではない。
数十体のカボチャ頭が、ダンジョンの通路を埋め尽くしている。
それぞれが様々な形状の武器を手にし、奇怪な笑い声を上げながらこちらへ向かってきた。
「……」
俺は無言で、一歩前に出る。
足元に力を込めた瞬間——
ゴオォッ!!
黒い闇が俺の腕を包み込み、刃を形成する。
進化した闇の刃。
もはや俺の手の一部のように馴染み、鋭い切っ先が闇の奥で妖しく輝いている。
「まとめて消えろ」
そう言い放ち、俺は駆け出した。
ズバッ!
一閃。
前方のカボチャ頭が真っ二つに裂ける。
その断面からは粘液のようなものが溢れ出し、地面に叩きつけられた。
だが、それで終わりではない。
「カボチャァァ!!」
四方八方から、カボチャ頭たちが襲いかかってくる。
しかし——
ヒュンッ!
俺は一瞬で姿勢を低くし、地を蹴った。
疾風のような動きで敵の群れをすり抜ける。
そして——
「遅い」
ズバババババッ!!
無数の斬撃が奔る。
一閃、また一閃。
闇の刃がカボチャ頭たちの体を次々と両断していく。
四肢が飛び、頭が弾ける。
あたり一面が、カボチャの破片と粘液まみれになった。
「くくく……たまらねぇな」
俺は笑う。
何も考えず、ただ本能のままに敵を屠る——この感覚。
だが、それはまだ終わりではない。
「カボチャアアアアアア!!」
奥から、さらに巨大なカボチャ頭が現れた。
カボチャの王。
その手には、巨大な鎌が握られている。
俺は闇の刃を構え、ニヤリと笑った。
「いいぜ……かかってこい」
次の瞬間——
俺は地を蹴り、カボチャの王へと一気に接近する。
闇が唸りを上げる。
この戦いに終わりはない——
俺がすべてを斬り伏せるまで。