第十四話・第三節:銃声
監視者たちが一斉に襲いかかってくる。
速い——だが、遅い。
奴らの動きは鋭く正確だ。だが、それだけだ。俺はもう、こんなものでは倒れない。
「——遅ぇよ」
俺は闇の刃を振り抜いた。
一閃。
目の前の監視者の腕が宙を舞い、闇に溶けるように消えていく。
そのまま踏み込む。刃を反転させ、もう一体の胸を貫いた。
「……ッ」
無表情のまま、そいつが崩れ落ちる。血すら流さない。ただ静かに倒れるだけ。まるで人形だ。
「次は——どいつだ?」
俺は刃を引き抜き、残りの監視者たちを見据える。
「……驚いた。予想以上の適応速度だ」
クローンの一人が呟く。
「これほどの戦闘能力……なるほど。確かに”世界の敵”に相応しい」
「——黙れ」
俺は足を踏み込んだ。
刃が唸る。
次の瞬間、三体のクローンがバラバラに弾け飛んだ。
残るのは、最初に話しかけてきた監視者一体。
「……圧倒的だな」
そいつが呟く。
俺は血の一滴も浴びていない。俺の力が、明確に奴らを凌駕していた。
「終わりだ」
俺は刃を振り上げた。
しかし——
「……ッ!?」
突如、背後から鋭い衝撃が走る。
銃声。
俺の肩口が弾ける。
「……何?」
振り向く。
そこにいたのは、レジスタンスの一人——銃を握り、蒼白な顔をした男だった。
「お……お前は……裏切り者だ……」
震える声。
「俺たちを……殺しに来た奴らと……同じ顔……同じ……ば、化け物……化け物だ……」
そいつは俺に銃口を向けたまま震えている。
俺と敵の区別など、そいつにはつかないのだろう。
「——チッ」
痛みはすぐに引いていく。
俺の中の闇の力が、傷を塞ぐように蠢いていた。
「……そうか。そうだな」
俺は小さく笑う。
こいつらは俺を恐れている。敵と同じ姿の俺を。敵と対峙している俺を。敵を遥かに凌駕する闇の力を有した俺を。
そうだ。俺は”人間”じゃない。
なら——どうする?
俺は、俺の戦いを続けるだけだ。




