第十三話・第四節:決意
静寂が満ちた。
さっきまでの戦闘が嘘みたいに、誰もが固まっている。
カインは膝をつき、苦しげに傷を押さえていた。俺の暴走した力が、やつだけじゃなく、カインにも影響を与えたせいだ。
周囲の視線が痛い。
——恐怖。
俺に向けられているのは、それだけだった。
「……こいつを、連れて帰るのか?」
「やめたほうがいい。見ただろ? あれは人間じゃない」
「俺たちだって命が惜しいんだ。こんな奴を基地に置いておけるか?」
「ダンジョンの魔物と何が違う?」
まるで化け物を見るような目。
レジスタンスの連中は、当然のように俺を排除しようとしている。戦力として利用するうちはいいが、恐怖の対象になれば、即座に切り捨てる。それがこいつらのやり方か。
「黙れ」
低い声が空気を裂いた。
カインだった。
誰もが彼を見た。立ち上がるのもやっとなはずなのに、カインは俺の前に一歩踏み出した。
「こいつは……俺を助けようとしたんだ」
「でも、その結果お前も傷を負ったじゃないか!」
「それでもだ!」
カインの声が震えていた。
「お前たちに言われなくても、俺が一番よく分かってる。こいつが何なのか……正直、怖いさ。次に俺を狙うかもしれないし、いずれ制御できなくなるかもしれない」
周囲が息を飲む。
「でもな、こいつがいなかったら、俺は確実に死んでた。そしてお前らも、ここで全滅してた可能性が高い」
「それは……」
誰も言葉を返せなかった。
「俺たちは生き残るために戦ってるんだろう? それなのに、助けてくれた相手を簡単に切り捨てるのか?」
沈黙が広がる。
……だが、俺には分かっていた。
たとえカインが庇ったところで、俺がここに居続けるのは無理だ。
やつらの目には、もう俺が“異物”として焼きついてしまった。どれだけ人間らしく振る舞おうと、その認識が覆ることはない。
(……俺は、ここにいるべきじゃない)
フッと、笑みが漏れた。
皮肉でも自嘲でもない。ただ、一つの決意。
「……分かった」
「蒼真?」
カインが俺を見る。
「俺は俺のやり方で進む」
拳を握る。
俺にはやるべきことがある。
ダンジョンの最深部に至るために、この力を使う。
たとえ、それがどんな結末を迎えようとも——
「……私は最期まで、あなたのそばにいるわ」
不意に、エリシアの声がした。
「……エリシア?」
「ええ。あなたがどんな道を選ぼうと、私はあなたの味方よ」
静かに、でも確固たる決意を感じる声だった。
真意は測りかねたが、それでも俺は深く息を吐き、前へ歩き出す。
——もう、迷わない。




