表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/98

第十三話・第三節:暴走する闇の力

 かぼちゃ頭の笑い声が響く。


「ハハッ! 捕まえたよ、お兄さん」


 カインの体が宙に浮かび、黒い鎖のようなものに絡め取られていた。


「……クソッ!」


 カインはもがくが、鎖はピクリとも緩まない。


 かぼちゃ頭が楽しげに小首を傾げる。


「ねぇ、せっかくだしさ、お兄さんも“かぼちゃ”にしちゃおっか?」


 そう言うなり、鎖の先にぶら下がるカボチャのランタンが怪しく光り始める。


「消えろ!」


 カインは力を振り絞り、懐に隠していたナイフを取り出すと、鎖を切り裂こうとした。


 しかし——


 ズブリッ!


「——がっ……!」


 かぼちゃ頭の細い指が、カインの腹に突き刺さった。


 その指は鋭い鉤爪のように変化し、カインの体をえぐる。


「ぎゃははっ! やっぱりお兄さんの血、あったかいねぇ!」


 血が滴り落ちる。


 カインの口から短い息が漏れ、膝が崩れ落ちた。


 ——このままじゃ、やられる。


 それを見た瞬間、俺の中で何かが弾けた。


「てめぇ……!」


 怒りと共に、腕に力がこもる。


 黒い刃が腕から生えた。


 闇の刃。


 それは俺の力の一部……だが、今までとは違う。


 刃は黒く脈動し、根元からさらに枝分かれするように成長し始めていた。


「ギギ……!」


 腕に痛みが走る。


 骨がきしみ、筋肉が裂ける感覚。


 それでも俺は目の前の敵に意識を向ける。


 ——カインを助けなきゃ。


 俺はかぼちゃ頭に向かって飛び込んだ。


「おまえを潰す……!!」


 刃を振るう。


 ズバァン!!


 闇の刃が空間を裂き、かぼちゃ頭を吹き飛ばした。


「ぎゃはっ!? 何それ、痛いじゃん!」


 かぼちゃ頭は宙を舞い、地面に叩きつけられる。


 俺の腕の刃は、まだうねっていた。


 ——いや、それどころか、さらに伸び、増えている。


「……?」


 視界がぐにゃりと歪んだ。


 そして次の瞬間——


「——ぐっ……!?」


 鈍い音が響いた。


 カインが、膝をついていた。


 腹部から新たな血が流れ出ている。


「……あ?」


 俺は自分の腕を見た。


 黒い刃が、カインの肩を貫いていた。


「お、おい……」


 カインの顔が苦痛に歪む。


 俺はすぐに刃を引っ込めようとした——が、刃は俺の意志とは関係なく脈動し、まだ何かを求めているようだった。


「……ッ、やめろ!!」


 俺は必死に力を込め、刃を消した。


 ズルン……!


 闇の刃が消え、カインの肩から血が噴き出す。


「は……はぁ……」


 カインは荒い息を吐きながら、俺を見上げた。


「……おまえ、今の……」

「違う……! 俺は、おまえを傷つけるつもりじゃ……!」


 だが、カインの目には、俺への疑念が浮かんでいた。


 俺の背筋が凍る。


「ぎゃははっ! すっごいねぇ、お兄さん! 仲間も斬っちゃうなんて、最高にクレイジーじゃん!」


 かぼちゃ頭が倒れたまま、楽しげに笑っていた。


「そのまま全部、ぶった斬っちゃえばいいのに! ねぇ?」


 その言葉が、俺の頭の奥でぐるぐると渦を巻く。


「……黙れ」


 俺は低く呟き、歯を食いしばった。


 闇の刃を使うたびに、俺は何かを失っていく。


 それが人間性なのか、それとも理性なのか——今の俺には分からない。


 だが、確かに言えることが一つだけある。


 このままでは、俺はいつか——。


「……」


 カインは痛みをこらえながら、俺を見ていた。


 レジスタンスの仲間たちも、遠巻きに俺を見つめている。


 その視線の中には、微かな恐怖が混じっていた。


 俺は静かに息を吐き、拳を握りしめた。


 この力は、俺にとって何なのか。


 これからも使い続けていいものなのか。


 答えはまだ、見えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ