第十三話・第二節:影を断つ一閃
闇の刃を構え、カボチャ頭の怪物を睨む。
「さっきのは惜しかったわね。でも、次はどうかしら?」
エリシアが俺の横に立ち、ナイフを構えながら言う。
「影を自在に操るなら、狙うべきは”影が動かない瞬間”だ」
俺はそう答えながら、じっと奴の動きを見極める。
カボチャ頭は影に潜り込み、再び奇襲を仕掛けようとする。だが、その一瞬、影がわずかに歪んだ。
——そこだ!
俺は即座に跳躍し、影の中心に向かって闇の刃を振るう。
ズバァッ!!
刃が影を裂いた瞬間、空間が震え、影の奥からカボチャ頭の本体が弾き出される。
「な、なんで!?」
奴の驚愕の声が響く。
「影の移動にも”隙”はあるんだよ!」
俺は着地と同時に駆け出し、一気に間合いを詰める。
「くらえッ!!」
再び闇の刃を振り下ろした——が、その瞬間、奴の体が霧のように揺らめき、すり抜けた。
「くっ……!」
「やっぱり、まだ本体を仕留めてない……!」
エリシアが叫ぶ。
カボチャ頭は地面に落ちると、転がるように後方へ下がり、悔しそうに叫んだ。
「チッ、面倒くせぇ! こりゃ、一旦退くしかねぇな!」
「逃がすかよ!」
俺はすぐさま追おうとするが——
「待って、蒼真! 罠よ!」
エリシアの声が響く。
次の瞬間、足元の影が一気に膨れ上がり、黒い手が無数に伸びてきた。
「しまっ……!」
瞬時に跳び退るが、カボチャ頭はその隙に影へと沈み込んでいく。
「ハハハ! また会おうぜェ! カボチャ仲間ぁ!」
高らかに笑いながら、奴の姿は完全に消えた。
……逃げられた。
俺は闇の刃を消し、忌々しげに拳を握る。
「……クソッ」
「仕方ないわ、今の私たちでは決定打に欠けていたもの」
エリシアが肩をすくめながら言う。
「でも、奴の特性はある程度分かったわ。次に戦うときは、必ず仕留められるはずよ」
「……ああ」
俺は息を整え、視線を上げる。
戦いは終わったわけじゃない。
これからも、何度でも奴と相まみえることになるだろう。
——次こそ、決着をつける。
その時、少し離れた場所でカインの声がした。次いで、仕留め損ねたばかりのカボチャ頭の声——