第十三話・第一節:影に潜む罠
ゴォォォォン……!
耳をつんざくような轟音が、ダンジョンに響き渡る。
カボチャ頭の怪物が影を操るたびに、周囲の空間がねじれるような錯覚を覚えた。
「チッ、こいつ……!」
俺は即座に横へ跳び、影の波が迫るのを回避する。だが、避けた先の地面が突然沈み込み、黒い触手のようなものが俺の足に絡みつこうと伸びてきた。
「っ……甘い!」
闇の刃を振り下ろし、触手を斬る。手応えは確かにあった。だが、切断されたはずの触手が煙のように消え、すぐさま別の場所から新たに現れる。
「……きりがねぇな」
「蒼真、相手をよく見て……」
エリシアが俺の後方で警戒を続けながら言う。
「この怪物……影そのものを操ってる。どこにでも潜り込み、どこからでも攻撃できる」
「そういうことか……!」
つまり、こいつを倒すには”本体”を叩くしかない。
俺はカボチャ頭の怪物の姿を捉えようとするが、奴は影の中を縦横無尽に動き回っていた。
——どこだ? 本物は……
目を凝らしながら、周囲の影の動きを観察する。
すると、一つだけ違和感のある影があった。
「……見つけた」
俺は迷わずその影へ向かって跳躍する。
「そらよッ!」
ズバッ!!
闇の刃を叩き込む——しかし、その瞬間、俺の体がぐらりと傾いた。
「……なっ?」
足元が消えている。
影が地面を”消した”のだ。
「しまっ——」
落下する俺の背後から、カボチャ頭の怪物が現れ、愉快そうに笑う。
「ハハッ、残念!」
「っ……!」
だが、そのとき——
バシュンッ!
銀色の閃光が飛び、怪物の腕を弾いた。
「蒼真! 下!」
エリシアの声が響く。
俺は即座に身を捻り、崩落しかけた床の縁を掴んだ。
「ナイスだ、エリシア!」
「礼はいいから、早く戻って!」
エリシアは光を纏った投げナイフを構え、影を撃ち抜きながら援護してくれている。
俺は腕に力を込め、一気に地上へ跳び上がる。
「さて……」
体勢を立て直し、再びカボチャ頭と向き合う。
「今度こそ、確実に決めるぞ」
俺の腕に、再び闇の刃が形作られる。