第二話・第一節:カボチャ軍団との死闘
「……はっ、面白ぇ」
俺は笑った。
ゾンビの群れを一掃してから、どこか満たされない気持ちがあった。
圧倒的な力を持っているのに、試す相手が弱すぎる。
だが——
今度の敵は違う。
「試すのは俺の方だろ」
俺は地を蹴った。
——瞬間、視界がブレる。
かつての俺の動体視力なら、何が起こったか理解できなかっただろう。
だが、今の俺にはわかる。
カボチャの怪物たちが、“人間離れした速度”で襲いかかってきたのだ。
「チッ……!」
すぐさま身を翻し、カボチャの拳をかわす。
重い風切り音が耳元をかすめる。
一発でも食らえば、ただの人間なら粉々だろう。
だが、俺はもう”ただの人間”じゃない。
「……お返しだ」
俺は手をかざし、黒炎を叩きつける。
——ゴォッ!!
黒い炎がカボチャの怪物の一体を包み込む。
だが——
「……燃えねぇ?」
確かに炎は当たった。
だが、カボチャの怪物は燃え尽きることなく、その場に踏みとどまっている。
(さっきのゾンビと違って、こいつらは耐性がある……!)
カボチャの頭部がギギギ……と音を立てて俺を見た。
そのギザギザの口が、ニタリと笑ったように見える。
「……なるほどな」
俺は自分の黒炎を見つめる。
どうやら、このままじゃ”効かない”らしい。
(なら、試すしかねぇ)
俺は拳を握り、力を込めた。
黒炎を、ただの”炎”じゃなく——“俺の意思”として練り上げる。
——ブォォォッ!!
黒炎が刃のように形を変え、俺の腕に絡みつく。
「……“砕く”ならどうだ?」
俺はカボチャの怪物に向かって跳んだ。
こいつらは炎に耐性がある。
だが、“物理的な破壊”にはどうなのか——
「喰らえ!!」
黒炎をまとった拳を、カボチャの頭部へと叩き込む。
——バキィィッ!!
硬い感触とともに、カボチャの頭が砕け散った。
次の瞬間——
ブシュゥゥッ!!
カボチャの体が一瞬で崩れ落ちる。
まるで魂が抜けたかのように、黒い霧となって消えていった。
(……こいつら、頭を潰せば終わりか)
なら、やることは決まっている。
「次、行くぞ」
俺は目の前のカボチャの軍団に向けて、再び踏み込んだ。