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第十二話・第二節:不穏な気配

 ——違和感が消えない。


 夢なのか記憶なのかも分からない映像。研究施設にいたエリシアの姿。

 それが何を意味するのか、今の俺にはまだ分からない。


「本当に、大丈夫なの?」


 心配そうに覗き込んでくるエリシアの紅い瞳を見つめながら、俺は曖昧に頷いた。


「……少し、ぼーっとしただけだ」

「あんまり無理しないでね。何かおかしいと思ったら、すぐ言って」


 その優しい声に、一瞬だけ迷いが生じる。

 目の前のエリシアは、俺を気遣い、共に戦う仲間だ。

 だが、俺の記憶にあった彼女は——


(……今は考えるな)


 状況は変わっていない。今は目の前の敵をどうにかするのが最優先だ。


 俺は気持ちを切り替え、周囲を見渡す。


 ここは、ダンジョンの最奥にある広間——のはずだった。

 だが、何かが変だ。


「……なあ、エリシア」

「うん?」

「この場所、さっきまでと違わないか?」


 エリシアも周囲を見渡し、一瞬だけ息を呑んだ。


「……確かに……そうよね」


 広間の壁が、まるで生きているかのようにうごめいている。

 闇の波紋が広がり、まるで巨大な生物の体内にいるかのような錯覚を覚える。


「ダンジョン自体が……変化しているわ」

「そんなことがあるのか?」

「今までこんなことはなかった。でも、今は確かに起きている」


 エリシアが警戒するように武器を構える。


 俺も、すぐに身構えた。


 その瞬間——


 ズズズ……ッ


 暗闇の中から、ゆっくりと”何か”が現れた。


 カボチャの頭。


 鋭い笑みを浮かべるジャック・オー・ランタンの仮面。


 しかし、これまでの”かぼちゃ頭”とは違う。


「……こいつ、“別格”だな」


 今までの雑魚とは明らかに異なる威圧感。


 まるでダンジョンの意思が具現化したような、異様な存在感を放っている。


 少し離れた場所からは、ゾンビ特有の足音がいくつも聞こえてくる。カインやレジスタンスのメンバーがいる辺りからだ。


 エリシアが囁くように呟く。


「蒼真、気をつけて……」


 俺は無言で闇の刃を呼び出す。


 その時——


 カボチャの化け物が、楽しげに嗤った。


「——やっと、会えた」

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