表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/98

第一話・第三節:ダンジョン奥で”かぼちゃ頭”の異形と遭遇

 ゾンビの群れを蹴散らし、俺はダンジョンの奥へと進んでいた。


 通路は徐々に狭まり、壁の装飾も変わっていく。

 最初はただの石造りだったものが、奇妙な模様の刻まれた漆黒のレンガに変わっていた。

 どこからともなく、不気味なざわめきが響いてくる。


(……誰かが見てる?)


 そんな感覚がする。


 だが、立ち止まることはない。

 むしろ、俺の中の”何か”が前へ進めと囁いていた。


 やがて、通路の先に”扉”が見えてきた。


 巨大な鉄の扉——いや、錆びついたカボチャ色の金属でできたそれは、妙な彫刻で覆われている。

 歪んだ顔をしたカボチャのような意匠。

 目と口の部分がかすかに光り、まるでこちらを”監視”しているようだった。


「……入れってことか?」


 誰かが用意したかのように、扉は俺が近づくと同時に、ギィィィ……と不気味な音を立てて開いた。


 その先に広がっていたのは——


 異様な祭壇だった。


 壁一面に並ぶカボチャのランタン。

 それぞれが不気味な笑みを浮かべ、揺れる炎が影を作り出している。

 床には黒い蔦が這い、中央には巨大な石造りの祭壇。

 そして——


「……おいおい」


 祭壇の上に座していた”それ”を見て、俺は思わず呟いた。


 そいつは人の形をしていた。

 だが、その頭部は巨大なカボチャだった。


 ギザギザの口。

 目の部分からは紫色の光が漏れ出している。

 体は細身で異様に長く、黒いローブをまとっている。


 そして、俺を見下ろすと、ゆっくりと立ち上がった。


「……来タ、ノカ……」


 耳障りな、ひび割れた声。

 俺を”待っていた”と言わんばかりの口調。


(こいつ……何者だ?)


 明らかに、これまでのゾンビとは違う。

 いや、それどころか、“生物”ですらない。


 こいつの存在そのものが、このダンジョンと同じ”異質なもの”に感じられた。


「……貴様、何者だ?」


 俺は問いかける。


 だが、カボチャ頭の異形は答えなかった。

 代わりに、ゆっくりと手をかざす。


——ゴォォォッ!!


 次の瞬間、祭壇の周囲に並んでいたカボチャのランタンが一斉に”燃え上がった”。

 紫の炎が渦を巻き、空間を歪ませる。


 そして——“それ”が形を成した。


「……っ!」


 炎の中から現れたのは、無数のカボチャの怪物だった。


 歪んだ笑みを浮かべたカボチャの頭に、ガタガタと動くガイコツの体。

 それが十数体、こちらを取り囲んでいく。


 そして、カボチャ頭の異形が、再び低く囁いた。


「……試サセテモラウ」


 その瞬間——カボチャの怪物たちが、一斉に俺へと襲いかかってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ