第九話・第四節:不穏な変化
俺の闇の刃が最後の一体を切り裂くと、かぼちゃ頭の怪物は黒い霧となって消え去った。
「……終わったか?」
カインが警戒を解かずに周囲を見渡す。
「……ああ」
俺も呼吸を整えながら答えたが、どうにも体の感覚がおかしい。
(……指先の感覚が、薄い)
ゆっくりと右手を開いたり閉じたりしてみる。指は動くが、まるで自分の手じゃないみたいな感覚だ。
(やはり、闇の刃を使うたびに何かが削られている……)
「蒼真、大丈夫?」
エリシアが近づき、俺の顔を覗き込んできた。
「ああ……ちょっと疲れただけだ」
「そう……でも無理はしないで」
彼女は少し不安そうな表情を浮かべたが、それ以上は何も言わなかった。
カインとほかのレジスタンスの仲間たちも集まり、戦況の確認を始める。
「しかし……やっぱりおかしいぜ。あのかぼちゃ頭ども、以前より動きが洗練されてた」
カインの言葉に、エリシアも頷いた。
「うん……まるで誰かに鍛えられたみたいな動きだったね」
(誰かに、鍛えられた……?)
俺は考えを巡らせたが、その答えを導き出す前に——異変が起こった。
——ギィィィィィ……
「……ッ!?」
遠くで、何かが軋むような音が響いた。
「見ろ、ダンジョンの入り口が……」
カインが指さした方向を見て、俺は息をのんだ。
そこには新たなダンジョンの入り口が生まれていた。しかしそれはこれまでのような、ただの異空間の裂け目ではなかった。宙に開いた亀裂のような入り口の形が変わり、まるで”門”のようなものが形成されつつある。
「……これは」
「……なんだか誰かが意図的に作り変えているみたい……」
エリシアが震える声で呟いた。
(何かが起こる……!)
俺の直感が、強く警鐘を鳴らしていた。