第九話・第一節:レジスタンスの試練
レジスタンスのもう一つの拠点は、廃墟と化したショッピングモールの地下にあった。
埃っぽくて古びた空間だが、意外にも整然としている。ランタンが一定間隔で設置され、武器庫や医療スペースも確保されていた。壁には作戦会議用の地図や資料が貼られ、端末がいくつか並んでいる。
(思ったよりちゃんとしてるな……)
俺はカインの後ろを歩きながら、周囲を観察する。
「おい、新入り」
カインが立ち止まり、俺を振り返った。
「今日からしばらく、お前には雑務をやってもらう」
「雑務?」
「食料や物資の運搬、設備の修理、見張りの交代……ま、いろいろだな」
「……戦闘要員じゃないのか?」
「信用できねぇ奴をいきなり戦場に出せるかよ」
当然の判断だろう。
俺はまだ完全に受け入れられたわけじゃない。ただの「監視対象」であり、「見習い」だ。
「まあ、安心しろ。こっちもお前の力量はわかってる。戦力として使わねぇとは言ってねぇよ」
カインがニヤリと笑う。
「お前がどれだけ人間らしく生きられるか……それを試させてもらうぜ?」
「……人間らしく、か」
どこか引っかかる言葉だったが、俺は黙って頷いた。
※
しばらくして、俺はエリシアと一緒に物資運搬を手伝うことになった。
彼女と並んで地下通路を歩きながら、俺はぼんやりと考えていた。
「……お前らは、普段どうやって物資を手に入れてるんだ?」
「主に廃墟やダンジョンの探索ね。都市の物流が崩壊してるから、生活必需品は自分たちで確保しなきゃいけないの」
エリシアはそう言って、手にしたタブレットを操作する。
「今日は近くの廃ビルで食料と医薬品を探す予定よ。蒼真も手伝ってくれる?」
「もちろんだ」
俺たちは指定された倉庫に向かった。そこには既に数人のレジスタンスが集まっていた。
「お、エリシア! それに……新入りか」
屈強そうな男が俺を見て、顎をしゃくる。
「こいつ、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。戦闘は保証するわ」
「そういう問題かね……まあいい、行くぞ」
俺は言葉を飲み込んだ。
ここでは、まだ俺は「よそ者」なのだ。
それでも——
(やるしかないな)
俺は荷物を担ぎ、彼らの後について歩き出した。




