第一話・第二節:ダンジョン内部でゾンビ軍団と初戦闘
俺は、黒い穴の奥へと足を踏み入れた。
瞬間、背後の空間が歪み、世界が”閉じる”感覚が走る。
気づけば、俺は見知らぬ場所に立っていた。
——ダンジョン。
そこはまるで異世界のような光景だった。
床は石造りでひび割れ、壁には黒いツタが絡みついている。
天井の隙間からは薄暗い光が差し込み、辺りには濃密な”死の気配”が漂っていた。
(ここが……ダンジョンか)
この異様な空間に、俺はどこか”馴染む”感覚を覚えた。
それが不気味で、どこか心地よい。
——その時、背後で音がした。
ズズッ……ズズッ……
低く、湿った音。
俺が振り向いた瞬間、“それ”は群れをなして現れた。
「……ゾンビか」
朽ち果てた肉体、空虚な眼窩。
腐臭を漂わせながら、数十体のゾンビがのろのろとこちらに向かってくる。
——数が多い。
もし、“生前の俺”だったら、迷わず逃げていたかもしれない。
だが、今の俺には”逃げる”という選択肢が浮かばなかった。
むしろ——
(……やれるな)
戦える。
いや、“狩れる”という確信があった。
「試してみるか」
俺は右腕を軽く振るった。
瞬間、指先から黒炎が噴き出す。
——何も考えずに、“それ”を振り下ろした。
「燃えろ」
ゴォォォォッ!!
黒炎の刃が宙を裂く。
次の瞬間、先頭のゾンビが一瞬で灰と化した。
「……悪くない」
俺は炎をまとったまま、さらに前に踏み出す。
ゾンビたちが呻き声を上げながら襲いかかってくる。
しかし、遅い。
視界の隅で、奴らの動きがまるで”スローモーション”のように見える。
(この身体、すげぇな)
軽く踏み込んだだけで、今までの倍以上の速度が出る。
腕を振れば、“自動的に”黒炎が刃のように形成される。
力の制御は、俺の意識とは関係なく、まるで”馴染んだ武器”のように扱えた。
「……面白い」
俺はさらに加速する。
一閃。
黒炎が空を裂き、ゾンビの首が飛ぶ。
二閃。
両断された肉体が燃え尽きる。
三閃。
残ったゾンビたちが、一瞬で”消滅”した。
——戦闘終了。
俺は静かに息を吐いた。
……いや、正確には”息をしている感覚すらない”のだが。
(……これが、俺の新しい力ってわけか)
異常なまでの身体能力。
人間とは思えない速度と、圧倒的な火力。
まるで、俺が”この世界のために作られた存在”であるかのような……。
「……まぁ、いいか」
考えても仕方ない。
俺は再び歩き出す。
このダンジョンの奥に、“俺を呼ぶ何か”がある気がして——。