第七話・第四節:闇の刃、その代償
“ナイトメア・パンプキン”の体が軋む音を立て、ひび割れた裂け目から黒い霧が噴き出し続ける。
だが、それでもヤツは倒れない。
最後の力を振り絞るように、体をさらに膨張させ、無数のツタを伸ばし始めた。
「蒼真! こいつ、まだ……!」
エリシアの声が響くが、俺はすでに次の手を決めていた。
これ以上の攻撃が通るかどうか——いや、通すしかない。
俺は拳を握り、全身の闇の力を集中させた。
すると——
腕の表面がひび割れ、そこから黒い光が漏れ出す。
「……何だ、これ……!」
痛みはない。だが、得体の知れない感覚が腕を駆け巡る。
次の瞬間、俺の右腕から黒い刃が生えた。
闇が凝縮され、鋭利な曲線を描く漆黒の刃。
俺は刃の存在を直感的に理解した。
これなら——ヤツを一撃で仕留められる。
「……行くぞッ!」
俺は”ナイトメア・パンプキン”の懐へと踏み込み、闇の刃を振るう。
シュンッ!
刹那、空間を切り裂くような感触があった。
黒い刃がヤツの裂け目を深々と抉る。
“ナイトメア・パンプキン”の体が痙攣し——
「■■■■■……ッ!」
轟音とともに、ヤツはついに崩れ落ちた。
黒い霧が爆発的に噴き出し、ヤツの体は塵のように四散する。
俺は刃を構えたまま、その様子を見届け——
「……っ!」
腕に異変を感じた。
黒い刃が消えていく——いや、それだけじゃない。
俺の腕の皮膚が、まだひび割れたままの部分がある。
何かが、俺の体を侵食しようとしている——そんな感覚が残る。
「蒼真……その腕……」
エリシアが不安げに俺の腕を見つめていた。
だが、俺はゆっくりと拳を握り直し、平静を装う。
「問題ない……」
今はまだ、大丈夫だ。
だが、この力を何度も使えば——俺は、人間でいられるのか?
そんな不安が、一瞬だけ脳裏をよぎった。




