第七話・第三節:闇を纏いし拳
“ナイトメア・パンプキン”の裂け目から、黒い霧が再び噴き出す。
それと同時に、ヤツの体表が粘つくようにうねり始めた。
「こいつ……回復してやがるのか!」
俺は舌打ちしながら拳を握り込む。ヤツの裂け目に攻撃は通るが、すぐに自己修復するらしい。
「蒼真、もう一度弱点を狙って!」
エリシアの声が飛ぶと同時に、彼女は機敏に駆け出した。
彼女の手には先ほどと同じ小型のナイフ——今度はそれを逆手に構え、“ナイトメア・パンプキン”の周囲を素早く動き回る。
俺が攻撃する隙を作るつもりか——
なら、乗るしかねえ!
俺は闇の力を込め、腕に黒い靄をまとわせる。
「……今度こそ、ぶち抜く!」
“ナイトメア・パンプキン”の目がギラリと光った。
直後、ヤツは膨れ上がるように形を変え、無数の黒いツタを生やす。
それが一斉に俺とエリシアへと襲いかかった。
「くっ……!」
エリシアが素早く跳躍し、空中で身を翻す。
ツタを避けながら、彼女は光るナイフを投げた。
「……ッ!」
狙いは、ヤツの裂け目——しかし、わずかに逸れる。
それでも、そのナイフがヤツの注意を引いた。
「今だ!」
俺は跳躍し、ヤツの懐へと飛び込む。
闇の力を拳に集中させると、青白い雷のような光が迸った。
「おおおおおおッ!!」
渾身の一撃を、ヤツの裂け目に叩き込む——!
ズガァァァァン!!
轟音とともに、“ナイトメア・パンプキン”の体が大きく揺らぐ。
裂け目から黒い霧が噴き出し、ヤツの体がひび割れていく。
「……決まったか?」
俺は拳を引き、ヤツの動きを見極める。
だが——
「■■■■■■!!」
ヤツはまだ、倒れていない。
崩れかけた体を無理やり繋ぎ止め、最後の力を振り絞ってこちらを睨みつけていた。
「しぶとい……!」
エリシアも息を切らしながら構えを取り直す。
“ナイトメア・パンプキン”はまだ終わっていない——次の瞬間、ヤツは再び形を変え始めた。
こいつ……まだ何かを隠していやがるのか?
俺は拳を握り直し、最後の決着をつけるべく、構えを取った。




