第七話・第一節:「ハロウィンの王」との激突
闇夜に、不気味な月光が照らされる。
その下で——“ナイトメア・パンプキン”はゆっくりと動き始めた。
ギギギ……ッと骨が軋むような音を立て、巨大なカボチャの頭部が俺の方へと向く。
無数の眼球がうごめき、全身の裂け目が不気味に歪む。
「■■■■■■■■■■■……!」
耳障りなノイズのような”声”が空間を揺るがせた。
俺の全身に寒気が走る。
これまでの”上位種”とは明らかに違う……。
「……ハロウィンの王、か」
俺は拳を握り直す。
こいつを倒せば、このダンジョンの核心に迫れるかもしれない。
だが、それ以上に——
俺は、負けるわけにはいかない。
自分が何者なのかを知るためにも、この力が何なのかを確かめるためにも、ここで立ち止まるわけにはいかないんだ。
「行くぞ……!」
俺は一気に地面を蹴った。
“ナイトメア・パンプキン”も、ゆっくりと腕を振り上げる。
そして——
バゴォン!!
拳を振るった俺と、“ハロウィンの王”の巨大な爪が激突した。
衝撃波が辺りを吹き飛ばし、地面が陥没する。
俺はすぐに闇の力を増幅させ、反撃を試みる。
だが——
「チッ……!」
“ナイトメア・パンプキン”の圧倒的な力に押され、俺の体が後方へと吹き飛ばされた。
すぐに体勢を立て直すが、ヤツは追撃の体勢に入っていた。
「■■■■■■■■!」
無数の眼球がギラリと輝き、次の瞬間——
ヤツの裂け目が大きく開き、内部から黒い霧が噴き出す。
それは、“呪いの吐息”。
「くそっ……!」
俺はすかさず闇の力で防御を固めるが、霧の一部が俺の腕に絡みつく。
ジリ……ッと、皮膚が焼けるような感覚。
「なるほどな……こいつ、ただの物理攻撃じゃないってわけか」
俺は闇の力を集中させ、呪いの霧を振り払う。
“ナイトメア・パンプキン”は、まるで俺の動きを観察するように佇んでいた。
だが、その瞳の奥には確かに”殺意”が宿っている。
「さっきみたいな直線的な攻撃だけじゃ、こいつには通用しねぇ……」
俺は深く息を吸い込み、闇の力をさらに高めた。
すると——
周囲の影が蠢き始める。
俺の意志に呼応するかのように、闇が形を成していく。
「——なら、こっちも”本気”で行かせてもらうぜ」
俺は再びヤツの懐へと踏み込んだ。
拳に宿る闇の力が、いつもよりも濃く、深くなっているのを感じる。
“ナイトメア・パンプキン”も、それに応じるように動き始めた。
再び、衝撃のぶつかり合いが始まる——。




