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第五話・第一節:監視者との遭遇

 黒い霧が蠢く。


 闇の奥から、“それ”は現れた。


「……なんだ、あれは?」


 俺は無意識に身構える。


 そいつは人の形をしていた。

 だが、どう見ても”人間”ではない。


 漆黒のフードを被った長身の影。

 顔は見えない。フードの奥はただ、深淵の闇が広がるのみ。


「——■■■■■」


 聞き取れない囁きが、耳元で響いた気がした。


「……っ!」


 全身の毛が逆立つような感覚。

 兵士どもの時とは比べ物にならない——“圧”が、そこにある。


「おい、なんだこいつ……!」


 俺は少女に問いかける。


 彼女は青ざめた顔で、短く答えた。


「……オルド・ノクスの”監視者”よ」

「監視者?」

「私たちレジスタンスの動きを監視し、排除する存在。“彼ら”は……人間じゃない」


 少女の声には、滲むような恐怖が混じっていた。


 俺は目の前の”ソレ”を見据える。


 ……確かに、まともな人間とは思えない。


 そいつの身体は、霧のように揺らめいていた。

 まるで実体と虚像が入り混じっているような、不確かな存在。


「おい……あいつ、ヤバいのか?」

「……ええ、間違いなく。“あれ”に狙われたら、生きて帰れないわ」

「そりゃ……いいことを聞いた」


 俺はニヤリと笑い、拳を握る。


「なら、試してやろうぜ。俺が”生きて帰れるか”どうかよ」


 その瞬間——監視者が、動いた。


 ——スゥッ。


 それは、“滑る”ような動きだった。


 次の瞬間には、俺の目の前にいた。


「ッ……!!」


 間に合わない——


 監視者の腕が、黒い刃に変化する。


 そして、俺の首を——


 ズバァッ!!


 ……切り裂いた、はずだった。


「……?」


 監視者の動きが、僅かに止まる。


 俺は——無傷だった。


「ははっ……」


 俺は思わず笑った。


「悪ぃな。俺も”簡単には死なない”んでね」


 首に違和感すらない。


 まるで、“切られる”という概念自体が存在しなかったかのように。


 監視者の中に、ほんの僅か——“戸惑い”のような気配が生まれた。


 俺はその隙を見逃さない。


「今度は、こっちの番だ」


 右腕に、黒いエネルギーを集中させる。


 蠢く闇の波動——俺の”力”。


 それを、全力で叩き込む。


「——喰らえ!!」


 黒い拳が、監視者の顔面を撃ち抜いた。


 ——ドガァッ!!


 衝撃波が夜の街を震わせる。


 監視者の体が大きく弾かれ、霧の中へと吹き飛んでいった。


「……」


 俺は構えを解かない。


 果たして、あれで倒せたのか——?


 そして、霧の奥から。


「……■■■■■」


 聞き取れない囁きが、再び響いた。


 霧が、より濃くなる。


 ——これは、まだ終わらない。


 俺は拳を握り直し、再び前へと踏み出した。

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