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第二話 悪女・ダリア




「ほ、本当にダリアになってる……」


 ダリア・モーリス。「君とトキメキ♡王宮生活」作中において、ヒロインと攻略対象の恋路を邪魔する、所謂悪役令嬢である。


 作中における攻略対象は主に三人。この国の第一王子、第二王子、そしてダリアの専属執事だ。ダリアは、平民出身のヒロインが、貴族である攻略対象達と仲良くなることを許せず、どのルートにおいてもあの手この手でヒロインを虐げる。


 最終的にはその行き過ぎた行動が問題となり、攻略キャラ達に断罪されるのだ。


 広いパウダールームの鏡に映る、勝気な瞳の美少女。緩く巻かれたバイオレットの長い髪と、やたら胸元が露出された黒と紫を基調としたドレスは、紛れもなくあの悪女だった。


「どういう夢……?」


 別に、ダリアに対して露骨な悪感情があるわけじゃない。

 ゲーム内ではよくある敵役だし、攻略キャラとの仲を引っ掻き回してはくれるけど、最終的にはハッピーエンドが約束されている。だから、やきもきすることはあれど蛇蝎の如く嫌うほどでは無いのだ。


 でも、自身がダリアになってしまうのはまた話が違う。折角推しの存在する夢を見れたのに、最終的には推しに嫌われる立場なんて、己の脳みそはどうしてそんな判断を下してしまったのだろう?


 ヒロインでよくないか、そこは。不可思議に顔を顰めながらパウダールームを出たところで、レオンが壁に預けていた背を離した。


「大丈夫か?」

「う、うん……」

「すげー勢いで走ってくから何事かと思ったぜ。そんなトイレ我慢してたのか」


 からからと笑うレオンを、胡乱な目で見る。

 いくらなんでも女性に対してちょっとデリカシーに欠けた発言じゃないだろうか。作中のレオンは、明るいお兄ちゃん気質で、しかしヒロインに対してはいつだって紳士的だった。……ああ、なるほど。


(猫被ってたのか)


 まあ、好きな子にはよく思われたいもんね。


 一人で納得しながら、しかしどうしたものかと奈央はため息を吐く。


 このレオンの様子からすると、まだダリアが色々としでかす前の時間軸だと思われる。


 折角の夢だ。出来る限り堪能したいが、死にたくはない。


 うーん、と頭を悩ませる奈央を、緋色の双眸が静かに見つめていた。




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