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第6話 情報監視室で漫喫生活

 藤江ふじえ 幸頼さちより   27歳 関東公安調査局第一部勤務

 神楽かぐら 伝次郎でんじろう  42歳 日本宗教調世会企画部長

 船越川ふなこしがわ 瑠理香るりか 40歳代前半? 日本宗教調世会調査員


「これが、タイムマシン?」

 球体の左側にタラップが取り付けてある。制御室からは死角になっているが、内部に入れるようになっているのだろう。

「動くのですか」

 藤江は、異動から勤務して今日まで、ドッキリなのではないかと疑いが未だ晴れない。目の前の球体も「張りぼて」に思えてならなかった。


「痛いところを突くね。理論と設計は完璧なんだけど、制御するためのデータが足りないんだ。今あるデータでは、どの時間のどの場所に行ってしまうかわからない。それって、怖いよね」

 近いうちにデータ収集する機会がありそうだとも、神楽は付け加えた。


「ご覧いただいたように、この施設では重要な情報や技術を取り扱っています。それらが漏洩し、軍事転用されようなものなら、それは大変な脅威になるのです。藤江さんには、明日から二階の情報監視室で漏洩の防止に当たっていただきます」

 施設案内を終え、船渡川から告げられた。

 地下二階の情報監視室では、地下施設からの電話やデータ通信、ラジオ・テレビ放送など全ての通信が監視されている。それら膨大な記録から情報漏洩の端緒となる信号を探し出すのが、藤江の仕事となる。


「ただし、AIも不正通信の監視をしているから、藤江くんが何かに気が付く頃には、発信元をはじめ何から何まで把握されていて、現場には別の公安の人が到着しているだろうね」

 エレベーターに乗り込み、パネルを操作しながら神楽は言った。

「別の公安の人」とは、公安警察官のことなのだろう。

「そこで、藤江くんには、隙間時間に基本を学んでもらおうと思ってね。教材は、情報監視室に運んであるんだ」

 神楽は笑っている。


 エレベーターは、地下二階へと戻る。

 情報監視室は、執務エリアに入りすぐ左手にある。部屋の入り口には、またもやテンキーが付けられていた。

「ここは、番号とキーを押す指がセットで登録されているから、難易度が高いんだよね。考えたのは僕なんだけど、やりすぎだったかな」

 神楽は、ピアノを弾くような滑らかな手つき、テンキーを押している。

 情報監視室のドアが開いた。


 赤や青のランプがチカチカ光る古いSFドラマに出てくるような指令室を想像していた藤江だったが、目に飛び込んできたのは、二個のモニターを携えた小ぶりのコンソールパネルと、部屋中央のテーブルに積まれた本やDVDの山だった。


 H・G・ウェルズの「タイムマシン」、ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」、筒井康隆の「時をかける少女」、ダンテ・アリギエーリの「神曲」、「ギリシャ神話」、他にも「エジプト考古学」といった学術書や「インド神入門」といった新書もある。

 これを読めというのだろう。


「気晴らしの映画も用意してあるから、自由に観てね」


「タイムマシン(2002)」「時をかける少女(2006)」は、勿論のこと、「エクソシスト(1973)」「ゴーストバスターズ(1984)」「バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)」「コンスタンティン(2005)」「インターステラー(2014)」「IT/イット(2017)」などなど、明らかに偏ったジャンルの作品が目に入る。


 本を読んだり、映画を観ているだけで給料がもらえるなんて、何て幸せなのだろうと思うのも初めの三日位で、毎日ともなると苦行でしかない。

 藤江の漫喫生活は、五月の連休明けから六月までの一か月間も続いた。

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