第29話 タイムマシンの未来(了)
藤江 幸頼 27歳 関東公安調査局第一部勤務
神楽 伝次郎 42歳 日本宗教調世会企画部長
常磐道 勝清 42歳 日本宗教調世会調世部長
船越川 瑠理香 40歳代前半? 日本宗教調世会調査員
柏崎 順太郎 42歳 量子物理学リーダー
星野 龍生 40歳 高エネルギー物理学リーダー
築島 光男 39歳 ナノテクノロジーリーダー
雨宮 静香 38歳 時間理論データ解析リーダー
桜庭 夢 35歳 AIロボティクスリーダー
スパイの炙り出しとシステムの再起動を兼ねた二度の停電は、二番目の神楽が警備室で操作していた。
三番目の神楽は、サーバー室でプログラムを書き換えていた。
全ては、出発前の、一番目の神楽が組んだスケジュールに沿って行われていた。
「神楽さんは、その懐中時計を使ってスケジューリングしていたのですね」
今も、アンティーク調の大きめな懐中時計が、神楽の手に握られている。
「さすが藤江くん、正解。時間を決めるのは、適当なタイミングで構わないから楽だけれど、それに従わなくちゃならない二番目と三番目の僕は、大変だったよ」
全ての映像は、回収したSSDに保存されているはずだと、神楽は常磐道を見た。
「倍速で映像を見ましたが、神楽部長ばかり映っていて、なにが起こっているのかわかりませんでした。ようやく、意味がわかりました」
全員が、再び会議室に場所を移す。
時刻は、二十時三十三分になっていた。
「タイムマシンは完成しましたが、まだ改良しなければならない点も多いですな」
苦虫を嚙みつぶしたような顔で、築島は言った。
「マシンがある時間世界に、到着時刻を決め、受け入れるためのオペレータを用意していては、自由に行き来することもできません。この時間運航プロジェクトが継続するのであれば、改善すべき点ですね」
期待するように、星野は神楽を見た。
たしかに、今回のように詳細にスケジュールが組めるケースばかりではないだろう。そもそも、これではスケジュールを組む以前の時間世界には移動できないことになる。
「それは、解決できそうですよ」
パソコンをロッカーに片付け、帰り支度をしている神楽を、全員が見た。
「お披露目の時間運航では、柏崎先生がスパイだったと残念なこともありましたが、得られるものも多くありました」
神楽は、ロッカーを閉め、席に戻る。
「まず、神は手を出さなかった」
タイミングよく船越川が淹れ立てのコーヒーを運んできた。
「僕が過去の時間世界に二度行って、少なからずその世界に細工をして戻ってきたのに、神は何もしなかった。今回の時間運航は、神の許容範囲だったということです。全部が全部ダメというわけではないことがわかりました」
船越川から受け取ったコーヒーを口にする。
「到着時間を決めずにマシンがない場所に、行けることもわかりました」
これには、聞き手全員がどよめいた。
「研究室以外の場所にも、マシンで行ったということですか。いつ……」
先ほどまでの説明と矛盾する内容に、桜庭は質問しながら戸惑っている。
「いや、どこにも行っていません。元の時間世界に戻る際に、一秒早く出発して、設定しておいた十九時十四分二十三秒に一秒早く戻ったのです。受け入れ側のマシンは完全に作動していませんでしたが、無事に戻ることができましたよ。神に排除される位なら、試してみようと思ったのです」
なんとも気楽な理由だ。
「神を怒らせなければ、どの時代の世界にも行けそうです」
「しかし、行った先にマシンがなければ、元の時間世界に戻ることはできませんよ」
雨宮が指摘した。
神楽が過去の時間世界に移動しても、マシンはこの場に残っていた。
やはり、元の時間世界に戻るためには、マシンが造られていない時間世界には行けないのだ。
「ちょっと工夫すれば戻ってこられますよ。さあ、今日はいろいろあって疲れました。改良は明日からにしましょう」
それは、時間運航プロジェクト継続の宣言だった。
「お先に失礼しますよ。お疲れさま」
神楽は、コーヒーカップを片手に会議室を出ていった。
どう工夫すれば、元の時間世界に戻れるのだろう。
残された全員が考え込んでいた。
(了)
どうしたら、元の時間世界にもどれるのか。皆さんも考えてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました




