第23話 時間旅行に旅立つ神楽
藤江 幸頼 27歳 関東公安調査局第一部勤務
神楽 伝次郎 42歳 日本宗教調世会企画部長
船越川 瑠理香 40歳代前半? 日本宗教調世会調査員
柏崎 順太郎 42歳 量子物理学リーダー
星野 龍生 40歳 高エネルギー物理学リーダー
築島 光男 39歳 ナノテクノロジーリーダー
雨宮 静香 38歳 時間理論データ解析リーダー
桜庭 夢 35歳 AIロボティクスリーダー
制御室に入った神楽は、手元の懐中時計をコンソールに接続するとスイッチを操作した。
研究室のマシンが、一瞬、光を放った。
「では、これからマシンのお披露目をしますが、皆さんもご存じのとおり、向かう先でもマシンを動かしておかなければなりません……」
神楽は、これからマシンを動かすという。
あまりにも場当たり的な展開に、藤江は驚かされた。
五人のリーダーたちも、お互いの顔を見合わせ困惑している。
「神楽さん、スパイの話はどうなったのですか。スパイがいる中でマシンを動かしては、敵の思う壺なのではないのですか」
その場にいる全員を代表するように藤江は尋ねた。
「スパイの件は、解決しているはずなんだよ」
「犯人が、わかったのですか」
「いや、僕は知らないけど、わかっているはずだね。説明するには時間が足りないな。船越川さん、お願いしたいことがあります」
神楽の説明は、一向に要領を得ない。
何をすればよいのですかと、船越川が一歩前に出た。
「今から、僕がマシンに乗り込みます。向かう先の時間は既にセットしてあるから、コンソールからはエネルギー定位を操作してください。その後、十九時十四分前に受け入れのための準備もお願いします。操作方法は、覚えてる?」
「覚えています。部長は、未来に向かうのですか」
「いや、そういうわけでもないけど……もう、時間になるので、行くね」
神楽は、説明を切り上げた。研究室へのドアを開け、ひとり部屋に入ると、タラップからマシンに入り、姿を消した。
マシンの扉が閉まる音がする。
「これから、出発します。周辺エネルギーを滞留させてください」
制御室のスピーカーから、神楽の声が聞こえてきた。
船越川はコンソール上のボタンを押す。
マシンが、光を放った。
コンソール上のデジタル時計は、十五時四十六分三十三秒一三八七二五を表示している。
誰が声を掛けるでもなく、全員が、研究室に入りマシンの周囲に集まった。
「神楽さんは、時間旅行に出かけたのですか」
築島は、眉間のしわをさらに深くして言った。
桜庭は、マシンのドアレバーを上にあげ、扉を開く。
電話ボックスほどの空間しかないマシン内に、神楽の姿はなかった。
「成功したのですね」
雨宮が言う。
誰もが違和感を感じていた。
藤江にもわかる。
神楽は、スパイの正体を知らぬまま、違う時間世界に行ってしまった。
しかし、問題は解決していると言った。
やはり、外部の協力者がいて、電源を切断しているのだろうか。神楽は、外部の協力者の身柄確保の情報を得ているのだろうか。
それに、マシンの動かし方もおかしい。
初回のお披露目ならば、行先を三時間二十九分先の十九時過ぎに設定しなくてもよいはずだ。五分もあれば、マシンの中の神楽は消え、再び現れることは十分に確認できる。
神楽は、未来に行くわけでもないと、口ごもっていた。
何しろ、三時間二十九分ほど先であろうと、未来の時間世界に神楽が行くということは、神が嫌がることを神楽は知っているはずだ。
このまま、十九時十四分の約束の時間になり、神楽がマシンから出てきたとしても、その神楽は、三時間二十九分前の時間世界の神楽であって、先ほど出発したこの時間世界の神楽ではない。そんな初歩的なミスをする神楽ではないはずだ。




