第22話 また停電になった
藤江 幸頼 27歳 関東公安調査局第一部勤務
神楽 伝次郎 42歳 日本宗教調世会企画部長
船越川 瑠理香 40歳代前半? 日本宗教調世会調査員
柏崎 順太郎 42歳 量子物理学リーダー
星野 龍生 40歳 高エネルギー物理学リーダー
築島 光男 39歳 ナノテクノロジーリーダー
雨宮 静香 38歳 時間理論データ解析リーダー
桜庭 夢 35歳 AIロボティクスリーダー
「さあ、皆さん座ってください」
神楽の指示で、全員が初めに座っていた席に戻る。
藤江も神楽の隣に座った。
「警備室の録画ユニットの破壊は、明らかに人為的なものです。この中にスパイが一人、あるいは、複数人、紛れているのでしょう」
神楽は、全員を見渡して言った。
視線が特定の人物で止まることも、瞳孔が開くこともない。神楽もスパイの目星は付いていないのだろう。
神楽と視線が合う。
そのとき、再び照明が落ちた。
「動かないで!」
神楽の声が、暗闇の中、響き渡った。
今回の停電も、五秒ほどで復旧した。
全員が、そのまま座っている。
「これは、明らかに異常事態です。助けを呼びましょう」
船越川が、神楽に訴えた。
藤江は、瞬時にリーダーたちの表情を窺うが、全員が純粋に驚きの表情を浮かべている。事前に知っていた人物はいないようだ。
誰もが、何を話してよいのかわからず、黙っている。
「どうしましょう。応援を呼ぶ前に、また機器の点検をしますか」
神楽は、誰に言うともなく、全員に向かって尋ねた。
「最初の停電のときに配電盤を見ましたが、細工されている形跡はありませんでした。外部から電源を遮断されているのかもしれません」
藤江は、自身の見解を交えて話す。
「なるほど、外部からの操作だとすると、仲間がいるということですね。しかし、この五秒の停電二回で何ができるのだろう。現に全員がこうして座っているだけですからね」
神楽は、藤江の説を否定しないものの、全面的に賛成というわけでもなさそうだ。
「データを確認した方が、よいですかね」
神楽は、また全員に向かって尋ねる。
「サーバ機は、先程もUPS(無停電電源装置)が働いて、データの破損はありませんでした。コピーされた形跡もなかったのですから、疑うわけではありませんが、ここは全員が一緒にいるべきだと思いますね」
築島が言う。
「私も、その方が、懸命だと思います。停電の原因究明は、開発エリアの職員に頼んだ方がよいのではないですか」
星野も、この中にスパイがいると睨んでいるようだ。
桜庭も頷いている。
「わかりました。それならば、話は早い」
神楽は、立ち上がった。
「また、みんなで制御室に移動しましょう」
神楽の突飛な提案に、全員が驚いている。
「会議室にいては、いけないのですか」
「さあ、行きますよ」
雨宮の質問にも答えず、神楽は真っ先に席を立った。
さあさあと急かされ、全員が立ち上がる。
藤江も、立ち上がり、神楽の顔を見る。
心なしか、楽しんでいるように見えた。
時刻は、十五時三十七分になる。




