第21話 全員一緒に動きましょう
藤江 幸頼 27歳 関東公安調査局第一部勤務
神楽 伝次郎 42歳 日本宗教調世会企画部長
船越川 瑠理香 40歳代前半? 日本宗教調世会調査員
柏崎 順太郎 42歳 量子物理学リーダー
星野 龍生 40歳 高エネルギー物理学リーダー
築島 光男 39歳 ナノテクノロジーリーダー
雨宮 静香 38歳 時間理論データ解析リーダー
桜庭 夢 35歳 AIロボティクスリーダー
制御室に真っ先に飛び込んだ藤江は、研究室の球体のマシンから出てくる星野と桜庭を目にする。
藤江は、研究室に入る。
「マシンは壊れていませんよ。怪しい機器が取り付けられた形跡もありません」
星野と桜庭は、顔を見合わせ頷きあった。
神楽たちが、制御室に入ってくる。
「ただの停電だったのですか」
科学者には見えないゴツゴツした星野と桜庭の2人も、制御室に戻ってきた。桜庭が尋ねる。
「いや、監視モニターの録画ユニットが破壊されていて、明らかに緊急事態です」
神楽は答えた。
十五時二十一分になる。
「困ったよね。このエリアは外部から侵入できないから、やはり、この中の誰かがスパイなんだろうね」
神楽の言葉に雨宮が質問する。
「絶対に外部から侵入できないと、言い切れるのですか」
「できないね。藤江くん、そうでしょ」
いきなり話を振られた藤江は、一瞬の間を置き説明する。
「はい、各階には、エレベータシャフト以外、人が通れる大きさの配管はありません。換気ダクトも人が通れる大きさはありませんし、スパンごとに厳重な格子が付けられています」
「抜け穴とかないの」
築島が、ねっとりとした口調で聞く。
「それは、ないですね」
藤江は、自信を持って答えた。
「全てのダクトスペースやパイプスペースを開け、中に入り、この目で確かめました」
「藤江くんは、前職が公安の人だから疑い深いんですよ」
神楽は、科学者たちに説明する。
「そういうわけで、藤江くんがスパイでなければ、誰もこのエリアには入れないのです」
ひどい言われようだと、藤江は神楽を見る。
「さて、この先、単独行動は控えた方がお互いのためですね。一度、全員、会議室に戻りましょう」
神楽が先頭になって、制御室を出る。全員が部屋を出たことを見届けて、藤江も後に続いた。
全員が廊下に立っていた。
「トイレに行く方は、今、行っておいてください。飲み物を用意する方も、ここでお願いします」
懐中時計を手に、神楽は全員に向けて話す。
築島と船越川は、化粧室に入る。
桜庭と柏崎は、コーヒーを淹れに給湯コーナーに入った。
「停電だけで、何も奪えていないのですから、この先も何かありそうですよね」
星野が意味深な言葉を残して、化粧室に後から向かう。
「星野先生の言うとおりですね。これほどの情報であれば、敵も手段を選ばないでしょうから、危険ではないですか」
雨宮は、眉間に皺を寄せて話す。
「神楽さん、別な公安の人を呼びましょうか」
雨宮の心配はもっともなことだと思う。何か起きる前に対処した方がよいだろう。
「その内、タイミングをみてね」
神楽に、そのつもりはないらしい。
「晴れの舞台に、とんだ騒動ですよね」
そう言いながら、カップを手に柏崎は、桜庭と並んで戻ってきた。さすがの桜庭にも笑顔はなく、白い歯も見えない。
築島は、手をハンカチで拭きながら出てくる。その後から星野も出てきた。
遅くなってごめんなさいと、船越川も戻った。
全員が、会議室に入る。
十五時三十一分になる。




