第19話 稼働に向けて右往左往
藤江 幸頼 27歳 関東公安調査局第一部勤務
神楽 伝次郎 42歳 日本宗教調世会企画部長
船越川 瑠理香 40歳代前半? 日本宗教調世会調査員
柏崎 順太郎 42歳 量子物理学リーダー
星野 龍生 40歳 高エネルギー物理学リーダー
築島 光男 39歳 ナノテクノロジーリーダー
雨宮 静香 38歳 時間理論データ解析リーダー
桜庭 夢 35歳 AIロボティクスリーダー
「マシンを動かす準備をしますので、それまで休憩にします」
神楽の言葉に、桜庭が「ああ漏れそう」と言いながら席を立った。
カフェインが切れそうですと、星野が後を追う。
「いよいよ、ですね」
目を輝かせながら神楽にそう言って、雨宮も席を立つ。
神楽は、まだパソコンを操作している。
「船越川さん、マシンを起動しておいてもらってもいいですか」
神楽の依頼に船越川は、わかりましたとパソコンを閉じて立ち上がった。
「私も、お手伝いしましょう」
相変わらず眉間に皺を寄せている築島が申し出て、ふたりで会議室を出ていく。
「これで、設定完了」と、神楽は人差し指でエンターキーを押し、パソコンからUSB接続の懐中時計を外した。
「さあ、僕たちも行きますか」
神楽は、空のコーヒーカップを手に立ち上がる。
うまく動くといいですねと、柏崎も席を立った。
ひとりで会議室にいても、やることはない。
藤江も後に続いた。
廊下に出ると、紙コップを手に星野が給湯コーナーから出てきた。廊下に香ばしいコーヒーの香りが立ち込めている。
「準備ができたら、お呼びしますよ」
神楽は、星野に声を掛けた。
お願いしますと星野は会議室に戻っていった。
「喉、乾いたね。藤江くんもコーヒー飲む?」
神楽は、話し続けて喉がカラカラだと言う。
神楽と藤江は、給湯コーナーに立ち寄る。先に行ってますよと、柏崎は制御室のドアを開けて入っていった。
給湯コーナーには、ミニキッチンがあるにはあるが、神楽以外は、奥に鎮座しているカップ式自動販売機を利用している。
藤江が、ホットコーヒーとミルク多めのボタンを押したとき、トイレから会議室に戻る桜庭が見えた。給湯コーナーにはドアがないので、廊下と向かいの制御室の出入り口が見渡せる。
神楽は、コーヒーをドリップすることなく、カップに注いだ水を一気に飲み干し、懐中時計を見ている。
「そろそろ時間なので、先に行ってるよ」
そう言って廊下に出た神楽は、会議室に戻る雨宮と出合い頭にぶつかりそうになる。
「これは、すみません。危ないところでした」
神楽は、雨宮に謝り、そろそろ準備ができる頃ですと、彼女を誘って制御室に入っていった。
抽出完了のメロディーが鳴り、藤江はコーヒーを取り出す。
顔を上げたとき、神楽が廊下を右手奥に歩いて行くのが見えた。トイレにでも行くのだろう。
藤江は、コーヒーを飲みながら、この先のことを考える。
神楽の言うとおり、スパイはいるのだろうか。いるとすれば、誰がスパイで、どのような行動を起こすのか。そのとき、藤江は何をしたらよいのか。
ぼんやりとイメージし始めたとき「準備ができたよ」と、神楽に声を掛けられた。
給湯室の時計の針は、十五時九分を指している。
急いでコーヒーを飲み干し廊下に出た藤江は、会議室に入る神楽を見た。
神楽は、星野と桜庭を連れて、すぐに廊下に出てくる。
そのとき、全ての照明が消え、地下五階は暗闇に覆われた。




