第17話 「タイムマシン」と「どこでもドア」
藤江 幸頼 27歳 関東公安調査局第一部勤務
神楽 伝次郎 42歳 日本宗教調世会企画部長
船越川 瑠理香 40歳代前半? 日本宗教調世会調査員
柏崎 順太郎 42歳 量子物理学リーダー
星野 龍生 40歳 高エネルギー物理学リーダー
築島 光男 39歳 ナノテクノロジーリーダー
雨宮 静香 38歳 時間理論データ解析リーダー
桜庭 夢 35歳 AIロボティクスリーダー
「冥界が時間を超越しているのなら、空間も超越していて欲しいじゃないですか。しかし、空間も超越しているのなら世界中に鬼が現れてもおかしくないのですが、実際には、鬼が西洋に現れるのは珍しい。悪魔も日本には滅多に現れない」
神楽はそう説明するが、藤江は、文化の違いでそう見えるのであって、冥界での存在は同じものではないかと思う。
そんな考えを見透かしたように、神楽は話を続ける。
「確かに、赤い身体の悪魔や赤いマントを翻す悪魔は、日本の赤鬼と同じ存在なのでしょう。日本の妖怪の中にも悪魔を想起させるものも多くいます。しかし、鬼らしい鬼は日本に、悪魔らしい悪魔は西洋に、圧倒的に多く出現するのです。空間は、思ったほど自由に移動できないようです」
「冥界はこの世界と同じように、車に乗らないと速く移動できないということですか」
自身の理論と相容れない空間理論に、雨宮は不満げに尋ねた。
「全く超越していないというわけでもなさそうです。霊たちの瞬間移動は、観客を怖がらせる定番アクションですから。瞬間移動は、空間を超越していますが、近距離に限られているのも間違いありません。おそらくは、時間移動よりも空間移動の方が、コストが高い。より大きなエネルギーが必要なのでしょう」
神楽は、コーヒーを飲み干した。
「私が、質問してもいいですか」
藤江は、遠慮がちに手を挙げる。
もちろん構いませんよと神楽、隣に座る築島も頷いている。
「以前、神楽さんから『今年の初めに十四世紀のイタリアからダンテ・アリギエーリが現代日本にタイムスリップしてきた』と聞きました。時代はともかく、イタリアから現れるのは、相当なエネルギーが必要だったということですか」
「そうだね、より多くのエネルギーを空間に滞留させる必要があるから、今の我々の技術では、とても、できない。もし、海外の過去や未来の時間世界に行くのならば、マシンを海外に運んで、その場所で動作させた方が手っ取り早いね。ダンテさんを運んだのは神だから、エネルギーも自在に操れるんだろう。敵うわけがない」
神楽は、空のコーヒーカップを持ったまま、天を仰いであっさり降参する。
「『タイムマシン』より『どこでもドア』の方が、技術的には高度ということですか」
桜庭は、ごつごつした顔でニコリともせず言った。




