第16話 プロジェクトの始まり
藤江 幸頼 27歳 関東公安調査局第一部勤務
神楽 伝次郎 42歳 日本宗教調世会企画部長
船越川 瑠理香 40歳代前半? 日本宗教調世会調査員
柏崎 順太郎 42歳 量子物理学リーダー
星野 龍生 40歳 高エネルギー物理学リーダー
築島 光男 39歳 ナノテクノロジーリーダー
雨宮 静香 38歳 時間理論データ解析リーダー
桜庭 夢 35歳 AIロボティクスリーダー
「では、予定どおり十四時から開始します」
神楽は、パソコンを閉じ、会議室を出ていった。
「藤江くんも、呼ばれているとは、ただ事ではないですね」
柏崎が、正面の席から藤江を見て言う。眼鏡の奥から鋭い視線を向けている。
「このメンバーの中に裏切者がいるということですか」
探るように藤江に尋ねた。
「神楽さんは、そう思っているようです」
藤江は正直に答えた。神楽本人が答えたとしても、同じように答えただろう。
桜庭が、柏崎と雨宮のパソコンも重ねて運んでいる。
ありがとうと受け取った雨宮が話す。
「これだけの発明ですから、各国の諜報機関が狙うのも無理はないですよね。私もコンベンションに参加すると、決まって怪しげな方が探りを入れてきます」
「そう、それを遮るように日本の方が、割って入ってくれますよね。こんな僕でも、守ってくれるんだと感心しますよ」
星野は笑いながら話す。多分、藤江の同業者か別の公安の人が守っているのだろう。
十三時五十八分、神楽はコーヒーカップを手に戻ってきた。
時計の針は、十四時ちょうどを指している。
「改めて、お忙しいところ、お集りいただき、ありがとうございます」
神楽は、立ったまま挨拶をするが、すぐに座って話を続ける。
「皆さんがお察しのとおり、長年に渉るプロジェクトが、いよいよ完成を迎えました。今日に至る道のりは、決して平坦なものではありませんでしたが、春先に十分なデータを得ることができ、理論と技術と情報が揃ったのです。リーダーの皆さんには、それぞれの専門分野ごとに関わっていただいているので、改めて全体像から説明しましょう」
各リーダーに異論はなかった。
「時間運航プロジェクトは、ちょうど十年前の二〇一四年、僕の趣味が高じて、チームを立ち上げました」
最初は趣味だったのかと、藤江は半ば感心する。
「時間運航の原理を思い付いたきっかけは、怨霊や悪魔、鬼の出現が過去の記録と符合したことです。何百年も前の霊体が『恨めしや』と言って現代に現れたり、現れた悪魔の名前が何千年前の記録と一致したりしたのです」
「悪魔の名前が、わかりますか」
星野が尋ねた。
神楽の話は、リーダーにとっても初めてのようだ。
「映画でよくあるように、名乗りますよ。そこで、思ったのです『霊体は何百年もの間、意識を保つためのエネルギーを保持できるのか』『悪魔は、そんなに長生きなのか』と。エネルギーの話は、星野先生の専門ですよね」
「確かに、食物などのエネルギー源を摂取するわけでもない霊体は、内部で核反応でも起こしていない限り、何百年も存在することは難しいでしょうね」
星野は、日焼けした顔に白い歯を見せ、笑いながら答えた。
「確かめてみましたが、ガイガーカウンターは反応しませんでした。ねっ、船越川さん」
「はい、核反応はありませんでした」
確かめたのか。しかも、他人に確かめさせたのかと藤江は驚く。
「となれば、未知のエネルギー源という線は残るものの、冥界では時間を超越していて、怨霊や悪魔、鬼は好きなときを選んで、出現できると考えた方が理に適っていると思ったのです」
神楽は、コーヒーカップに口を付けて言う。
「時間と空間って、いつも一緒じゃないですか」
この展開にも慣れてきた。




