第15話 リーダーが集結しました
藤江 幸頼 27歳 関東公安調査局第一部勤務
神楽 伝次郎 42歳 日本宗教調世会企画部長
船越川 瑠理香 40歳代前半? 日本宗教調世会調査員
柏崎 順太郎 42歳 量子物理学リーダー
星野 龍生 40歳 高エネルギー物理学リーダー
築島 光男 39歳 ナノテクノロジーリーダー
雨宮 静香 38歳 時間理論データ解析リーダー
桜庭 夢 35歳 AIロボティクスリーダー
会議室のドアが開き、ナノテクノロジーの築島が姿を見せた。
地下四階の開発エリアで昼食をとってから来たのだろう。
相変わらず、白衣姿で、口をへの字に結び不機嫌そうな表情だ。
「これは神楽部長に船越川さん、おはようございます。藤井君も」
築島は、見た目ほど不機嫌にしているわけではない。今の挨拶でさえ、藤江をからかうために、わざと言っていることは、十分承知している。
ロッカーからパソコンを取り出しながら、築島は言う。
「今日、全員を集めるということは、いよいよ完成したのですか」
早々に核心を突いてきた。
「そうなんです。築島先生の自己修復セラミックのお陰で、完成が早まりましたよ」
神楽に隠す気はないようだ。
「いや、私は、今まであった技術を応用しただけですから、新たに理論を打ち立てた柏崎さんや雨宮さんには敵いませんよ」
謙遜しながら、築島は藤江の隣に座った。なんだかんだ言って、からかうつもりなのだろう。
「お茶を淹れてきますね」
船越川は、気を利かせて席を立ち、ドアを開ける。
「あら、こんにちは」
ドアを塞ぐように、高エネルギー物理学の星野が立っていた。
船越川は、その巨躯を見上げている。
「星野先生も、お早いですね」
時刻は、十三時六分になる。
「これは、驚かせてすみません。いよいよ動くかと思うと落ち着かなくて、時間には早いのですが来てしまいました」
星野は、茶色の髪を掻き揚げながら、会議室に入ってきた。
タイムマシンの完成披露であることは、全員、予想が付いているようだ。
「おや、築島先生も、お出でだったんですね」
外はまだまだ暑いですねと星野はハンカチで汗を拭うと、白色のポロシャツの裾をバタバタと扇ぎながら、築島の隣に座った。
「隣に星野先生が座ると、暑苦しくて敵いませんよ」
そう言う築島であるが、藤江と同様、星野もからかうターゲットに他ならない。いつも、築島の隣は、星野の席と決まっていた。
船越川は、お茶を二人の前に置くと、そのまま星野の隣に席を移した。
十三時十八分、時間理論データ解析の雨宮が現れた。
雨宮は、ピーコックブルーのマキシ丈の半袖ワンピースを軽やかになびかせながら、会議室に入ってきた。
「こんにちは。神楽先生が皆さんを集めるとなると、タイムマシンが完成したのは間違いないのでしょうけど、先生のことですから、もう未来にでも行ってきて、何かしら重大なことでも発見してきたのではないですか」
雨宮は、ころころとした声で、神楽を見て言った。
「いや、未来の自分が、初めに動かす予定でしたが、違ったようです。動かすのにも、行先のオペレーターが必要なので、手軽に時間旅行することもできないのですよ」
これさえも隠さない。
雨宮は、エアコンの風にロングの黒髪をなびかせながら、神楽の右側からひとつ席を空けて座る。
先程まで船越川が座っていた神楽のすぐ右の席は、柏崎の定位置だ。
十三時三十三分、量子物理学の柏崎とAIロボティクスの桜庭が連れ立って現れた。
根っからの学者である柏崎と、民間に勤めていた桜庭は、意外にも相性は良いようだ。柏崎は、AIによる量子解析に興味があり、桜庭は、量子コンピュータを搭載したヒューマノイドAIロボットに関心がある。
「それは、夢さんの分野でしょ。ねぇ、皆さん、こんにちは」
スーツ姿の柏崎は、桜庭との話を切り上げて、挨拶をする。「ねぇ」と言われても、答えようがない。
柏崎は、いつもの席に座った。
桜庭は、見かけに反して「夢」という名前だ。皆からは「夢さん」とか「夢ちゃん」と呼ばれている。
「早く来たつもりだったのですが、最後でしたね。ごめんなさい」
桜庭は、半袖のワイシャツから伸びる毛むくじゃらの腕で、刈り上げた頭をかいた。
「まだ時間前ですから、気になさらずに。皆さんお忙しいところ、急遽すみませんでした」
神楽は、二人が雨宮を挟むように座るのを待って、言った。
十三時四十七分、リーダー全員が揃った。




