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橋の彼方  作者: 千里空
深い闇へ
35/74

持つべきものは

一樹

「つまりお前が目撃したイジメられた子があの手紙の差し出し人ということ?」

「その可能性は高い」

翌日、昨日の出来事を光一に話し、ある仮設を立てた。

「流石に無理やり過ぎない?お前の知り合いであれば普通に相談に乗ればいいじゃないか?何でわざわざこんな回りくどいやり方で助けを呼ぶ必要がある?」

「あの子は反抗期というか、もう長い間僕を無視し続けてきた。多分素直に頼ってくれることはできないと思う」

「そもそも彼女とはどういう関係?」

「妹なんだ。義理だけど」

「は?お前妹なんかあったの?初めて聞いたぜ」

光一はかなり驚いたように言った。

「家の事情でね。あまり彼女のことを他人に言わなかった」

「なるほど。彼女の存在を伏せておくのがお家にとって都合のいいことってわけか」

僕らは似たような家庭環境だから、そういう暗い話に理解が早い。

美雪が井野家の一員であることはあまり知られたくない。知られたところで彼女の学校生活が良くなるとは思わないし、家での処遇は更に悪くなるかもしれない。

「とにかく、例え彼女が身内じゃなくても、イジメは確かにあった。目の前に助けが必要とする生徒にできる限りのことをする、それが僕らが今までやってきたことじゃないか」

「違わない。しかし、お家のことが絡むと、お前も前に出辛いだらう」

「だからこうして君と相談しているんだ」

光一は会心の笑みを見せてくれた。

「取り合えずこっちから探りを入れるよ。ここまで派手にやらかしては犯人はすぐに見付かると思う。妹さんも俺の知り合いの女の子に頼んで声をかけてみるよ」

「ありがとう。助かる」

「困る時はお互い様。それはダチってもんだろ」

「そうだね。持つべきものは友って言うし、君が友達でいてくれて本当によかった」

心強い味方が協力してくれて少し安心した。しかし美雪の方は光一のいつものやり方では通用しないだろう。彼女は頑なに他人を拒絶している。それがずっと気掛かりであった。

本当は他人の手など借りず、僕の力だけで彼女を助けたかった。しかし僕が目立った行動を取ると、すぐさま噂になり、広まっていくのが目に見える。その噂がもし父の耳元にまで届いたら、叱られるだけで済むだろうか。

色々気にして、やがて身動きが取れなくなった。

僕にとって、父と美雪、どっちが大事なのかは決まっている。しかし、幾ら天秤の片方に(おもり)を載せても、解決に繋がるわけではない。僕はまだ大人の庇護下でしか生きられない子供であるからだ。

何か上手い策はないだろうか。完璧に解決するという考えを捨て、多少リスクを負っても何とかして解決するという方向で、頭を絞った。

「ところで、お前、もしかして妹に恋している?」

唐突な質問に思考が中断され、我に返った。

「そんなわけないだろ」

「いいじゃないか、別に。血は繋がっていないんだろ?素直に言えよ」

俄然興味が湧いてきたように、光一は僕にしつこく質問してきた。年頃の子に男女問わずに恋話は避けて通らないというわけだ。

「妹として接してきた。家族としか思わないよ」

光一は納得していないようで、疑わしい目でこっちを見詰めていた。

「怪しいなぁ。あの子のことになると必死だよね。色恋沙汰も聞いたことないし、やはりあの子一筋だから?」

「バカバカしい。恋愛とかに興味がないだけだよ。というか、下らない与太話する暇があったらさっき言ってたことやった方がいいじゃないか?」

「はい。わかった。わかった。じゃあ先に失礼するよ、妹思いのお兄さん」

皮肉っぽい一言残して、光一は飄々と生徒会室を出ていった。

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