表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
橋の彼方  作者: 千里空
深い闇へ
33/74

決意

一樹

放課後、生徒会室でお昼やり残した仕事を続けていた。他のメンバーは会議の後各々の仕事を終えて返ったが、光一だけは僕に付き合って残してくれた。

今日中にやらなければならないということでもないが、先送りするのは僕の流儀ではない。仕事をこつこつやっていくのが性分だ。今日やらない分明日の仕事が増える。明日終わらなければまた先延ばし。そういう悪循環ができたらあっという間に破綻してしまうのだ。

二人が自分の仕事に集中している中、スマホの着信音が静けさを破った。

「悪ィ」

光一は席を外し、窓側によって電話に出た。

「うん…うん…分かった」

簡単な対応して、彼は通信を切った。それから急に机を片付けて物を鞄に仕舞い込んだ。

「悪い、ちょっと用事ができた。失礼するよ。後は任せる」

「こっちもすぐ帰るから、気にしないで」

それから僕は一人になった。今日分の仕事が終わる頃は日が暮れて、大分暗くなってきた。精神的な疲れを感じ、椅子に凭れかかって一息ついた。

もうすぐ学校の門は閉まるので、僕も片付けてから生徒会の鍵をかけた。

生徒会室と階段の間に図書室があって、そこを通る時にまだ閉めていないと気付き、中を覗いた。

「もうすぐ学校の門は閉まりますよ。そろそろ出ましょう」

カウンターの図書委員以外誰もいなかったようだ。彼女に近付き声をかけた。

本に集中していたその子は僕の声に反応し、頭を上げた。その図書委員は美雪だった。

彼女は感情のこもっていない視線で僕を見て、返事もくれず黙々と本を鞄に仕舞い、窓の閉まりを確認してから図書室を出た。

僕は階段の先で彼女が戸締りするのを待って、その後共に階段を降りた。

帰り道が同じでも、昔のように仲良く喋れる雰囲気がなく、ぎこちない空気が漂っていた。彼女が決別宣言をした以来、一緒に帰ることはなくなった。偶に帰り道が同じでも、決して対話はなく、本当に他人を貫く通した。

仲のいい兄妹は成長に連れてある日突然冷たくなったのは聞いたことある。僕らの現状はそれに当て嵌るかどうかは分からない。

階段に降り、各々自分の下駄箱に向かった。靴を履き直した後、出口の方で彼女を待っていたが、しばらくしても彼女が現れたなかった。心配になったので、彼女のいるはずの所へ行った。

ただ自分の下駄箱の前で立ち尽くしている彼女を見て、嫌な予感がした。

「どうした?」

彼女の下駄箱を覗いたら、そこにあったはずの靴はなかった。代わりに画鋲が沢山おいてあった。悪意しか感じないそれは、間違いなくイジメの手口だ。

「靴を探してみるよ。まだ構内のどっかにあるかもしれない」

「いい」

美雪は素っ気なく断って、上履きのまま学校を出た。

暗闇に迷いなく向かっていく彼女の後ろ姿は酷く孤独で、見ていると胸が苦しくなった。

彼女の孤独はずっと前から隠し持っていた。それに気付けなくて、彼女を更なる孤独の境地へ追い込んだでしょう。彼女に拒絶されてから、初めてそのことに気付いた。今まで僕は彼女のために色々やってきたつもりではいたが、本当は彼女に縋っていただけだ。そんな僕に構っていられないほど、彼女の心が凍りついたんだろう。

彼女の孤独を理解したい。彼女は何かと戦っているのかが知りたい。例え拒絶され続けても僕は彼女に寄り添うことを諦めない。それがとてもエゴなことであっても、僕はエゴを通すだけだ。

彼女の背中姿を目にしながら、僕は密かに決意した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ