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9日目:北門からフィールドへ

誤字脱字報告ありがとうございます、毎度お世話になっております。


 昨夜は僕がサームくんの本を読んで、イオくんがスキルと真剣に向き合ってから一度ログアウトした。

 リアルで1時間ほどの朝食休憩を挟んで再びログインすると、すぐにお宿の方でも朝食の時間だ。夕食がものすごく美味しかったから、朝食にもかなり期待してしまう。ので、起きて第一声が「イオくん! 朝ごはん!」だったことに関してはちょっと許してもらいたい。

 ちょっとイオくん! いつまで笑ってるのさ! 早く食堂行こうよ!


 というわけで、高級お宿の朝ごはんは、朝食バイキング形式!

 これがまた美味しい。何が美味しいって、手のひらくらいの大きさのオムレツがめちゃくちゃ美味しい。具は玉ねぎだけなのになんでこんなに美味しいのかわかんないくらい美味しい。

「イオくんこれ作れる?」

「隠し味はわかったけど、これ作れる自信ねえなあ……」

 なんて会話を思わずしてしまったほどだ。

 ぱりっぱりの焼き立てフランスパンも最高に美味しいし、新鮮サラダも野菜の鮮度がめちゃめちゃ感じられた。カリカリベーコンの旨味、そしてオニオンスープの甘み。美味いとしか言いようがない。

「美味しいものは世界を救えると思ってるんだ……」

 しみじみとそんなことを呟いた僕に、イオくんはちょっと反応に困る、みたいな顔をした。まあイオくんは食事より重視しているものがたくさんありそうだからそれは仕方がない。異論は認めます。

「あー、ナツ。オニオンスープなら多分、いけるぞ」

「えっ、やはり天才! 天才料理人がいる!」

「いや料理人じゃねえんだわ。まあ、作ってみるからあんまり期待せずに待っておいてくれ」

「やったー!」

 さすが! さすがのイオくん! えらい! 心の中で存分に親友を褒め称えておく。あんまり正直に褒めすぎるとイオくんは照れるので、適度なところでやめておくのがコツなのだ。


 朝食を食べ終わったら、ちょっとだけ部屋で休んでから9時頃に宿をチェックアウトした。

 そういえば契約獣の卵なんだけど、20%まで魔力を補充したらそれ以上吸収しなくなっちゃったので、1日の上限は20%なのかなと思う。ということは、生まれてくるまで後4日だね。楽しみだなー。

「ステータスオール+5くらいだな」

「お、結構すごくない? 今の僕、幸運48ってことだよね」

 良いお宿に泊まった特典の、次にどこかに泊まるまでステータスアップ。どのくらい上がるのかな? と思ってたけど、全部が+5はかなり大きい。合計で35も上がってるってことだもんね!

 このステータスアップって自費でお宿に泊まったときにもあるのかな、と思って調べたんだけど、掲示板には情報が無かった。安宿に泊まった報告はあるんだけど、そっちで何かしらのボーナスはつかないみたいだ。つまり、何かしらあるとしても、高くて良いお宿に泊まらないとだめなんだろう。


「幸運48か、レアドロップ狙えるかもな。北行くか? 水属性の敵を倒したいんだろ」

「ありがたい! <土魔法>上げたいんだー」

 昨日やることをリストアップしたけど、今日はとりあえず戦闘で良い。経験値も良い感じに溜まってるから、多分もうすぐレベルアップもするだろうし。一回ログアウトしてリアルで朝食もとれて、気力も十分だぞ。

 北門通り沿いの遊歩道は昨日通らなかったので、そこを歩いて北上する。晴れの日の散歩にこれ以上無いってくらい向いている道で、川沿いには淡いレモン色の花木がずらっと植えてあった。まだ盛りの時期には早いみたいで、花はぽつぽつ咲き始めたくらい。これからばーっと満開になったら綺麗だろうなあと思ってみていたら、同じく散歩中のお爺さんが「キランの花は冬の月の初旬が見頃だよ。一面が黄色に染まって綺麗だから、ぜひ見ていくといい」と教えてくれた。

 このレモン色の花、キランというのは、ナルバン王国の国花なんだって。だから、色んなところに植えられているし、特に学校とかギルドの庭とか教会とか、公共施設に多いらしいよ。

 お爺さんにお礼を言って、僕とイオくんは北門前に到着。大きな水門の隣に、沿うように道と門がある。詰め所の大きさは、南西門より小さかった。


「おはようございます!」

「はい、おはようございます。トラベラーさんですか、お気をつけて行ってらっしゃい」

 礼儀正しい兵士さんがにこやかに挨拶してくれたので、この人なら質問しやすそうだと思って聞いてみる。

「あの、僕はナツ、こっちのイケメン爽やかさんは親友のイオくんです。ちょっと伺ってもいいですか?」

「おや、ご丁寧に。私は北門所属の兵士、エーミルです。なんでもどうぞ」

「ありがとうございます。南西門の詰め所と比べてこちらは小さいように思うのですが、なぜですか?」

「ああ」

 エーミルさんは頷いて丁寧に説明してくれた。曰く、北門方面からの往来が他の門に比べて少ないため、人員を減らしているらしい。北門を出てしばらくは川沿いの平原が続くものの、その先はどんどん山道になっていくのだそうだ。正道はヨンドまで続いているものの、かなり険しい道なので好んで通る者はあまりいないんだって。

 そういえばイチヤでもそんな話聞いたかも。ヨンドからサンガの間は、ゴーラを経由するほうが行き来し易いって。

「そうなんですね、険しい山道かあ……」

「トラベラーさんたちも、もしこの先をヨンドへ抜けるなら、相応の準備をしてからのほうがいいですよ」

 エーミルさん、ちょっと声がハスキーだから一瞬分からなかったけど、多分女性だね。門の前に立っている人はみんなフルフェイスのヘルメットを被っているから、見ただけだと性別がわからないんだよな。

「ありがとうございます、今日は探索だけなので大丈夫です。行ってきます」


 北門を出てすぐのあたりは、のどかな平原だった。ピクニックに良さそうだなーと思う。川があるからここから西方面には行けないので、必然的に東方向に向かうことになるんだけど……。

「平原ではあるんだけど、あのへん沼地じゃない?」

「あー、だからウォータースパイダーが出るのか。よし、行こう」

「待って待って。一応【サンドウォーク】!」

 沼地のあたりって足場が悪いからね! いつも忘れがちな【サンドウォーク】だけど、今回はちゃんと覚えていたのでかけておく。イオくんは「おお」とちょっと驚いた顔をした。

「ナツが気を効かせている……!」

「なんでそんな感動気味に……」

「ドヤ顔を許すぞ?」

「しないよ! この程度で!」

 イオくんは僕をなんだと思ってるんですかね???



「ナツ! 【サンドウォーク】切れた!」

「了解! 【サンドウォーク】!」

 ウォータースパイダーは、やっぱり沼地にいた。しかもかなりわらわらと。これは蜘蛛恐怖症の人がいたら気絶する勢いだと思う。デフォルメされてて丸くてかわいい蜘蛛ではあるけど、それでも足が多いことに変わりはないからなー! 流石にこんなに密集されると、苦手じゃなくてもちょっとゾワッとするよ。

 うまく引っ張って少数と戦おうとしたんだけど、この魔物は3匹~5匹くらいのパーティーで動いているみたいで、1匹だけ相手にすることができなかった。

 <識別感知>と<鑑定>を駆使して、なんとか無難そうなレベル帯の3匹グループを釣ったけど、沼地はものすごく戦いづらい。常に足場に気をつけていないと【サンドウォーク】が切れたらそのまま転がりそう。HP管理と同列でバフの効果時間にしっかり気を配っておかないと。

「【ロックオン】いけるぞ!」

「了解! 【サンドアロー】!」

「【ロックオン】!」

 そんでもってこの敵、結構タフだ。魔法にも物理にも弱くなくて打たれ強いし、糸を吐いてこちらの動きを阻害しようとしてくるから正直面倒くさい!

「<土魔法>のレベルは上がるけど! 上がるけどさあ!」

「HP多すぎるなこいつ……、【打撃】!」

「【ライトアロー】!」

 よし、1匹撃破! 残り1匹になったので後少し!


 イオくんが盾術の<ジャストガード>を大量に発生させて、がんがん攻撃を弾いていく。攻撃が当たってないからHPは減ってないんだけど、気づくと足元あたりに蜘蛛の糸を吐き出してこっちの動きを阻害しようとしてくるんだよこの蜘蛛。

「【ファイアアロー】!」

 そこで、地面に向けて<火魔法>を使うことでこまめに燃やしておく。これをやらないとイオくんだけでなく僕も足を蜘蛛の糸に絡まれて転ぶので。……転んだとも! 

「もー、面倒くさい!」

「っし、【斬撃】!」

 斬属性が弱点らしいウォータースパイダーが、クリティカルでHPを大量に減らした。ここは畳み掛けねば! 

「【サンドラッシュ】!」

 金属音のような甲高い声を残して、ようやくウォータースパイダーが沈んだ。3匹のパーティーをようやく撃破である。


「ふー、お疲れー」

「お疲れ。レベル上がったか?」

「上がった!」

 プレイヤーレベルはこの前のトレント戦で上がったばっかりだけど、職業レベルの方は問題なく上がった。これで幸運につぎ込んで0になったPPが復活したので、なんとなく安心。急にステータス足りなくなった時とかに備えられる……そんな状況あるかわかんないけど。

 それにしても、自動で振られたPPは幸運と魔力かあ。幸運が39まできたから、ここまできたら40欲しいなあ。

「面倒ではあるけど、倒せなくはないな。経験値結構いいし、しばらくここでレベル上げるか?」

「うーん、今日はそれでも良いと思う。今ならステータス+5だから倒しやすいんだろうし。明日また挑戦したら苦戦しそう」

「あー、それはあるだろうな」

 集団戦になってしまうところが利点でもあるけどネックでもあるんだよね。一気に経験値がドバっと入ってくるからすごくお得感があるんだけど、複数相手だとイオくんにめちゃくちゃ負荷がかかるし、ヘイトのコントロールがちょっと難しい。1対1ならさほど苦労しない感じなんだけどな。

 大人しくソードリモでレベル上げするべきか、明日は東に行ってデバフかけてくる敵とも戦ってみるべきか……。今後が悩ましいね!


 そういえばドロップ品は落ちたかな? と共有インベントリを確認したところ、今の3匹から落ちたのは「ウォータースパイダーの糸」が6本と「ウォータースパイダーの眼球」が3つ。

 ……眼球……だと……?

「あ、よかった、デフォルメされてる」

 リアルなやつだったらどうしようかと思った。ぎょろっとした目玉とかはさすがに見たくない。この眼球はガラス玉みたいな質感だからグロテスクな感じがなくて精神的にも安心です。

「眼球……? お、<鑑定>によるとこれ、アクセサリーの素材らしいぞ」

「えっ」

「細工師が模様を入れて魔除けのお守りにするらしい」

「あー、なるほど」

 そういう呪術方面のアクセサリーなら相応しいか。細工師……僕も<細工>を覚えたらできるかもしれないんだろうけど、ちょっと眼球は扱いたくないな……。

「この糸が高く売れるってドロガさんが言ってたやつだよね。1匹につき2つドロップしてるから、これがある程度貯まるまでは戦おう」

「おう、じゃあ、次のを釣ってくるか」

 今はお財布に余裕があるけど、お金はいくらあってもすぐ足りなくなるものなのだ。

 お昼まではがんがん戦おう! 

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