閑話:運営レターVol.1
「アナザーワールド:トラベラー」リリース日記念
皆さま、こんにちは。夏休み真っ盛りのこの時期、いかがお過ごしでしょうか。
8月1日、無事に「アナザーワールド:トラベラー」先行体験会のサービス開始日となりました。1日からの10日間は先行体験会ということで、抽選に当たった幸運なプレイヤーのみが先にプレイ中です。幸いなことに、聞こえてくる感想は「楽しい」という好意的なものが多く、運営としても手ごたえを感じています。11日からの本サービス開始ではスクリーンショットをSNSなどにアップできるようになり、動画の配信も解禁されますので、ぜひ、イチオシの景色を教えてくださいね。
さて、ゲーム初日にふさわしい話ということで、開発ディレクターより、このゲームがどうやってできたのか、という話をさせていただきたいと思います。
ダイブ型VRゲーム全盛期の今、このゲームをどの方向で作っていくのか、というのは、運営としても頭を悩ませた部分でした。
アクションに注力するのならば、「ワールド・ウォー・オンライン」や「ガンファイト」。
剣と魔法のファンタジーならば、「ブレイブファンタジア」「イリュージョンアース」。
人気の高い動物との触れ合いなら、「アニマルプラネット」「マイファーム・オンライン」。
一部熱狂的なファンがいるメカ物なら、「カスタマイズ・レジェンズ」。
既にそれぞれに代表作と言えるような、人気のあるゲームが揃っています。この中に割って入るゲームとはいったい、どんなコンセプトにすればいいのか。
開発チームは、「住人(NPC)とストレスなく関われる物にしよう」と言う結論に達し、試しに一つの世界を作り上げるところから始まりました。
初期の段階では、文明レベルは低く設定し、1つの国に300人ほどの住人(NPC)を住まわせていました。その段階では、まだAIも学習前ですから、ある程度の指針に沿った行動をとるゲームのキャラクターに過ぎず、地形なども作りこんでいなかったので普通のNPCの動きをしていたと思います。
次にしたことは、国の地形の創造です。
どこに山脈を置いて、どこに湖を置くか。どこからが海で、どこが国境か。植物の種類、天候、作りこめるところはたくさんあります。環境に変化があると、住人たちはそれまで通りの行動ができなくなったり、不都合が出てくる。そんな中で彼らは、自分で思考を始めました。いくつかのパターンを学習し、それに応じた行動をとり始めたわけですね。
そのまま、開発チームはその「世界」を何百年か放置しました。もちろん、加速させた状態で、です。
滅んだなら滅んだでいいし、栄えたなら大成功。現状維持されることだけが失敗。そう割り切って様子を見たのです。
その結果、「アナザーワールド」は、剣と魔法の世界として成長しました。王が選ばれ、国が栄え、地域ごとに特産品が生まれました。様々な人種が国を行き来し、国ごとに特色も出ました。
住人たちは自由に職につき、子孫を残し、人口が増えました。聖獣として設定していた竜が独自の価値観で動き、人々に守護を与えたり、竜人たちが聖獣の眷属としてリーダーシップをとりました。
理想的な世界でした。
この世界に魔王を産み落とし、プレイヤーたちと住人たちが協力して討伐する、そんなゲームが一つの共通イメージとして運営メンバーに確立していました。
これから魔王になる存在を用意し、プレイヤーを迎え入れる計画を立て、そこまでのバックアップデータをとって……すでに準備は万全だったのです。ですが、魔王が生まれ、人々に宣戦布告したとき、運営の思ってもみなかったことが起こりました。
住人が、自分の意思で魔王と接触し、その開戦を遅らせるよう交渉を始めたのです。
衝撃的なことでした。
ルシーダ=アズリル。
その名前を、歴史を調べたり、話好きな住人と仲良くなったりすれば聞くことがあるでしょう。彼女の存在が、「アナザーワールド」を変え、ゲームとしての「アナザーワールド:トラベラー」を確立させたと言っても過言ではありません。
誰かにこの名前の人について尋ねた時、皆さんは「救国の乙女」の話を聞くことになります。それは、運営の目の前で起こった出来事でした。
彼女は自らの命と引き換えに、開戦を1年遅らせることに成功しました。そしてその1年の猶予期間の間に、「アナザーワールド」の住人たちは可能な限りの対抗策を打ち、全力で魔王と戦ったのです。
我々は、それを見た時この世界にプレイヤーを呼び込むことをためらいました。この世界に生きる住人たちが、自分たちの力で魔王を倒そうとしている。その情熱に、水を差していい物だろうかと。
会議は長く続き、その間も住人たちは魔王と戦っていました。バックアップデータを使えば、魔王が生まれる前の状態へ戻ります。
ですが、戦況は刻々と変化し、少なくない犠牲があり、決断があり、別れが、悲劇が、そして勝利が、ありました。
約20年の魔王との戦争が、住人たちの手によって終わったとき。
我々運営はすでに、この世界を巻き戻すことは考えていませんでした。
戦争の前まで状態を戻し、プレイヤーをゲームに参加させ、魔王との戦いを繰り返す――それは、ここまで頑張って、血を吐くような思いで戦ってきた英雄たちへの冒涜なのではないか。
死を悼み、永遠の別れを乗り越えて、それでも前を向いた人々の思いを踏みにじるのではないか。
大切な人を守るため、どんなに厳しい戦いにも挑んだ英霊たちを否定するものではないか。
住人たちが助け合い、一致団結して掴んだ勝利を、どうしてなかったことにできるでしょうか。
私たちは、この世界を残したかったのです。
そのためにはどんなゲーム性にすれば良いのか。何度も話し合いました。そうしてできたのが、このゲーム「アナザーワールド:トラベラー」です。
この世界の住人達が考えて、迷って、時に失敗しながらも、つないだ未来がここにあります。
プレイヤー、いえ、トラベラーの皆さんには、ぜひ、その足でこの世界を歩いてほしい。我々がどうしても残したかったものを、その目で見てほしいと願っています。
強敵との戦闘に慣れた方には、物足りなく感じるかもしれません。
戦術を駆使して大人数で戦う一体感、などはありません。
壮大なストーリーを自分で引っ張りたかったという方や、ゲームプレイで目立ちたい方、PvPの大会等で勝ちたいという方には、きっと最適なゲームではありません。
ですが、世界観という意味では、外のゲームに決して負けないと自負しています。
どうか、「アナザーワールド」を楽しんでください。
運営からの心からの願いです。
運営チームでした。




