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7日目:トレント殲滅戦 後編


「右に集中! ファイアトレントの方は問題なく抑えられる!」

 イオくんの指示に従って、如月くんが右側のトレントに切り込んでいく。ここでようやくイオくんとガンちゃんが1匹ずつ相手にすれば良くなったから、だいぶ余裕ができた。

「【サンドランス】!」

 プリンさんが器用に杖と弓を持ち替えながら、適宜魔法と物理で攻撃していく。ピーちゃんは飛び回りながらの魔法攻撃で、ヘイトをもらいすぎないように時々プリンさんから呼び戻されている。

 さて、<光魔法><闇魔法>のアロー系魔法がそろそろクールタイムあけだ。

「【ダークアロー】! 【ライトアロー!】」

 もう少しで【ウィンドラッシュ】もクールタイムあけだ。普通のトレントの方はあとHP半分くらいだから……っと、その前にイオくんにバフを掛け直さなきゃ。

「【ディフェンシブ】! 【パワーレイズ】!」

「サンキュ!」

 HPは……自分でポーションを使ったのか、そんなに減ってないね。

 ガンちゃんの方はピーちゃんが【ゲンキニナレー】! と唱えたらHPが180くらい回復してた……え、すごくない? 上級魔法の回復なのかな、僕もそのくらいの回復量欲しい。

 

「範囲いくよー! 【ウィンドラッシュ】!」

「うおっ!? あ、フレンドリーファイアは無いんでしたっけ」

 如月くんを巻き込んで放った【ウィンドラッシュ】。迫りくる風の嵐は、向かってくる方向にいたらちょっと怖いよね、申し訳ない。如月くんが前にやってたゲームのブレイブファンタジアは、フレンドリーファイアもあるゲームだったから位置取りが大変だったっけ。

「【双波】!」

 双剣術のアーツを放ちながら、如月くんが一旦ガンちゃんの後ろに下がる。プリンさんが魔法攻撃をしている間に、僕は如月くんに【アクアヒール】っと。……あれ、なんか今キラキラした効果が……ガンちゃんが僕からヘイトを吸い取った気がする! ありがとうガンちゃん! ヘイト吸収系のアーツ、イオくんが欲しがってたな。

「ありがとうございます! ナツさん【ウィンドアロー】って後どのくらいで撃てます?」

「あと30秒くらい!」

「じゃ、明けたらトレントに集中攻撃で!」

「了解!」

 如月くんが再び前に出て行く。ピーちゃんがそこにすいっと近づいてバフのかけ直しをした。俊敏バフいいなあ、早く欲しい。<風魔法>レベル10で俊敏小UPの【ヘイスト】を覚えるはずだから、もう少しなんだけど。

 とりあえず僕はMPポーションを飲んで、魔法のクールタイムを待つ。


「よし、アロー行くよー! 【ウィンドアロー】!」

「私も! 【ウィンドアロー】!」

 プリンさんと一緒に弱点属性の攻撃を仕掛けると、トレントのHPはぐぐっと減って後ほんの少し、というところで止まった。ちょっとだけ足りなかったか、と思ったところに、

「とどめ! 【ウィンドアロー】!」

 と如月くん。ナイス!

「よっしゃ、トレント撃破!」

 ガッツポーズの如月くんに、

「ハイ・ファイアトレントは打属性有効! 上から叩きつける根の攻撃、少しでも掠ると火傷になるから気をつけろ!」

 とイオくんが告げる。火傷になる条件がわかっているなら、ある程度防ぎようもあるかな?

「【サンドアロー】!」

 とりあえず様子見で攻撃してみる。まだこっちはHP9割残っているから、ここから集中攻撃だ。


「【ロックオン】いけるから、<水魔法>頼む!」

「了解! 【アクアランス】!」

「イッケー! 【ザーザー】!」

 ピーちゃんそれアクアレインかな!? 僕の知ってるアクアレインより土砂降りだね!!

「行くわよ! 【ウォーターアロー】!」

「俺も! 【ウォーターアロー】!」

 とりあえず全員が<水魔法>を放つと、ファイアトレントのヘイトはやっぱりピーちゃんへ向いた。体の向きを変えた敵が攻撃をする前に、

「よし、【ロックオン】!」

 とイオくんがヘイトを奪い返す。さすがレベル16の敵、弱点属性でもそこまで劇的にはHPを削れない。

 ところで、なんで<水魔法>はアクアなんちゃらってアーツが多いのに、アローだけウォーターアローなのかな。アクアアローだと「ア」が続いて言いにくいから?

 イオくんの隣にガンちゃんが陣取って、半透明のバリアみたいなものを張っている。正面ではなく、自分たちの斜め上方向に張っているので、多分叩きつける系の攻撃用だろう。ガンちゃん頭いいな!

「【ウォーターアロー】! イオくんお守り大丈夫?」

「残3! 替えあるから大丈夫だけど、リジェネ頼む!」

「了解!」

 ピーちゃんはリジェネできないかなあ、と一瞬思ったけど、リジェネの呪文がピーちゃん語録でどうなるのか全然想像できなかった。【ダンダンナオル】とか? ……やめよう、なんか緊張感が。


 盾2枚になったことで、イオくんがある程度攻撃アーツを撃てるようになったので、そこからの攻略スピードは早かった。根の攻撃にだけ警戒しておけば、致命傷になるようなダメージの攻撃は来ない。僕とプリンさんが何も考えずにクールタイムあけた魔法を打ちまくっても、ガンちゃんが適度にヘイトを吸ってくれているようで、後衛に攻撃が飛ぶことは無かった。

 集団戦って安定するなあ。

 イオくんと2人パーティーでも問題があったこと無いけど、集団戦だとあんまり慌てる場面がなくて良い。……なんて考えて、ちょっと気を抜いていたその時だ。

「っ!? やっべ、如月は退避! ガンはプリン守れ!」

 急にイオくんが叫んだ。

 敵のHPは残り2割くらい残っているけど……大技? よくわからないけどそれならウォール張らなきゃ、と杖を構えたら、イオくんが全力で僕の前に走ってきた。

「えっ!?」

「ナツ、俺と敵の間にウォール!」

「何事!? 【アクアウォール】!!」

 僕の目の前で停止したイオくんが敵を振り返って盾を構える。その前に僕の張ったウォールが出現……あれ、これ僕めちゃくちゃ守られてるな。 ガンちゃんも隣のプリンさんの前で全力の盾を展開したところで、敵の様子がようやく目に入った。

 真っ赤に燃えたぎる色のファイアトレントが、急激に膨らんだかと思うと、次の瞬間。


 ドッカーン! 


 耳をつんざくような爆発音! 細かな破片がガンガンとウォールにぶち当たり、イオくんの盾にぶち当たって、それすら超えてきたものがいくつか僕にもスコーンと当たる。

「いだだだだだ」

「生きろナツ! HP180あったよな!?」

「一撃が! 一欠片が重いよ! あっ、ちょ、待って死ぬ死ぬ……【サンドウォール】! 【ファイアウォール】! 【ウィンドウォール】!!」

 これはやばい! 僕のHPが消し飛ぶ!! 物理防御全然増やしてないんだってば!! 

 死にものぐるいであらゆるウォール系魔法をイオくんの前に展開! 展開! 展開!! 爆風はウォールを超えてくるけど、トレントの破裂した欠片とかはなんとか阻める!

「ポーション!」

 盾で飛んでくるものをがんがん受け止めつつ、イオくんは器用に僕にHPポーションを投げつけた。ポーションは直接飲むか、使用を宣言して対象を指定するか、瓶ごと投げつけて当てることで使用できる。それにしても額にぶち当てることなくない!? いた……くはない、フレンドリーファイア無いからいいか。ちょっと解せないけどありがとう。

「なんでトレント爆発したの!?」

「知らん!」

「ピーチャンピンチ!! ピンチヨ!!」

「ピーちゃん早くこっちへ! 【アクアヒール】!」

 空を飛んでいたピーちゃんは上空で頑張ってトレントの破片を避けていたみたいだけど、回復を求めてプリンさんのところへ急降下。そしてプリンさんも僕と同じように張れるウォールを張る。

 やがて風が弱まり、欠片も飛んでこなくなった頃、僕のHPは残り32でなんとか生き残った。


「い、生きた……!」

 その場にへたり込んだ僕。そして僕の前で盾を構え続けてくれたイオくんのHP残は26。

「何この初見殺し」

 呆然と呟いたプリンさん、HP残量15。

「ピーチャンビックリシタノヨ……」

 そのプリンさんの頭の上でぐったりしているピーちゃん、HP残量41。

 そんな2人のそばにトコトコと寄っていって、プリンさんの足に抱きついたガンちゃん、HP残量29。

「全員満身創痍……! あ、そういえば如月くん大丈夫ー!?」

 そういえば如月くんだけはぐれてたっけ、どこに行ったのかと周囲を見渡すと、左手の崖の方から「なんとか生きてますー!」という返事が。伏せるような格好で岩の裏側に隠れていたらしい。この中で一番見た目はボロボロだ。えーと。HP残量……5!?


「ちょ、ちょっと待って全員集合! 【ウィンドヒール】!」

 唸れ! 僕の全体小回復! 回復量47! これで如月くん以外はHPレッドゾーンを抜けたはず。

「助かったー。さっきHPポーション飲んだばっかりで死ぬかと思いました」

「全員生きてて良かったわ。クエスト中に死んでしまったら、復活がどうなるのかわからないし……」

「あ、確かに。復活場所って基本的にはギルドだよね、イチヤに戻されたらしんどいなあ」

「流石にそうはならないと思うが……。危なげなく戦ってたのに、まさか自爆されるとは」

 あ、イオくんちょっと悔しそう。トドメ刺したかったんだろうなあ。でも敵が自爆しちゃったら、ドロップとかどうなるんだろう。まさかドロップなし! とかにならないよね?

 そう思ってインベントリを確認したら、ごっちゃりとドロップ品が共有の方に入っている。空きが無くなりそう。そして個人のインベントリにはレアドロップが2つ。……ピーちゃんのあの【ハピハピ】の効果はどうだろう?

 えーと、片方は「トレントの靴」。色変えが自由にできる靴で、物理防御+5の普通の靴だ。取り出してみると、折返しの襟がついたスタンダードなショートブーツで、割と良いデザインだった。でも今の靴が俊敏+5だから、変更はしないかな。色変え自由なのは魅力的だけどね。

 そしてもう一つは、これは……石? <鑑定>っと。


「……イオくん、ハイ・ファイアトレントの樹宝石、ってのが出たんだけど」

「あいつ爆発したのにちゃんとドロップあんのか」

「品質★10です」

「やべえな!?」

 やべえよ。

 いやほんとに初めて見た★10。この世に存在してたんだ? それでこれの用途は……杖の強化素材の中で最も良い物……なるほど、僕のユーグくんが最強になるフラグですねこれは。

「俺のも剣の強化素材だけど、氷雪の剣とは相性が悪そうだな。まあ、後でじっくり見るとして、馬車に戻ろうぜ」

「賛成」

 

 ゆっくり馬車に戻りながら聞いたけど、今回のレアドロップは全員武器の強化素材だったらしい。品質の高いものは今後高く売れる可能性があるねって話をした。個人ショップが実装されたら、イオくんの剣と相性の良い水か氷属性の強化素材を探したいね。

 キャンプスペースに戻るとみんな僕たちの帰りを待っていて、無事にトレントを倒したことを伝えると盛大にねぎらってもらえた。特に御者さんが喜んでくれて、お礼に夜はとっておきのお肉を出しますよ、と言ってくれたので、僕が「やったー!」とバンザイしたのは言うまでもない。

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